バキュームホースの効果

 学生時代から、ずっと欲しかった40万台のFD3Sを、就職が決まった時に新車で購入したTYさんが、購入後半年程して、レーシングアートにやってきました。
 もちろん、まだまだ新車の状態、全くのノーマルで、嬉しくて堪らない頃にレーシングアートにやってきました。

 エンジンルームを覗いて、つい言ってしまいました。
「このクルマ遅いでしょう!」と、当然TYさんは、むっとした様子で、「そんなことはありません。」「だいたい、まだFD3Sに慣れていないせいで、環7のコーナーで恐いくらいですよ。」と答えました。
さらに「そういうコメントは、おかしい!既にトラブルが発生している証拠ですよ。」と答えました。

 ノーマルのFD3Sは、下から上まで、安定したトルクを発生して、全くの素人が乗るとタービンが付いていることすら気付かないくらいで、”恐いくらい”というコメントはあり得ないと、説明しました。
 しかし、TYさんは、納得してない様子なので、「どちらにしても、ターボ車には、ブーストメーターは必需品だから、ブーストメーターを取付けて走ってみなさい。」とアドバイスしました。TYさんは、学生時代は、ガソリンスタンドでアルバイトしていたので、後日ブーストメーターは自分で取付けたようです。

 ブーストメーターを取付けたその日、かなり悲痛な声で、レーシングアートに、いきなり電話が来ました。「ブーストが上がりません!」「瞬間的には、0.75キロまで上がる時もあるけれど、平均して0.3キロまでしか上がりません。どうしたらいいんでしょう?」と、おろおろとかなり取り乱した様子です。

 正直なところ、私の心の中では、「この間説明した時は、むっとして話もろくに聞いていない様子だったのに、何を今さら!」という気持ちにもなったのですが、そこは心の優しい(?)私は、
「この間、説明したことが原因で、起こっていることだから、対策をすればなんでもないよ。」と話したら、 TYさんは、少し落ち着いてきました。

 早速、予定を入れて作業しました。
 作業の終わったクルマを引取りにくる日、電車の駅を間違えて、かなりある距離を半ば走る位のスピードで、TYさんはやってきました。
「作業に対する報告書を作成するから、とりあえず、その辺を試乗してきて。」とクルマを渡しました。
なかなか、帰ってきません。作業代金は、先に貰っているので、そのことは心配ではないけれど、「大丈夫かなあ。どうしたんだろう?」などと待っていると、半分は、とても嬉しい。あとの半分は、納得が行かない表情で帰ってきました。

 どうしたの?と聞いたら、「言われたように直りました。下から上まで、安定して速い。でも・・」と言って、取外したバキュームホースを、摘みながら、「こんなもので。こんなもので。」と呪文のように唱えています。
もう一度、対策前に起きていた現象と、行なった作業を詳しく説明し、”もの”自体は、関係ないと言っても、「説明は、理解できるんだけど、本当にこんなもので。こんなもので。」と、あいかわらず、呪文(?)を唱えています。

 こちらからすれば、発生するトラブルの原因を探し、それを根本から、直す作業を行なうのだから、その結果は、ごく当たり前のことだと思う。それだけのことで、何の不思議もないことなんですけどね。

興味のある方は、バキュームホースの基本、0-200mのデータ