ウエストゲート・アクチュエーターのコントロール方法の基本
このページは、必ず、アクチュエータータイプのタービンのコントロール方法をきちんと理解した上で読んでくださいね!
まず、アクチュエーターのみで、ブーストをコントロールする場合の簡略図から説明しておきましょう。
ウエストゲート・アクチュエーターは、タービンのコンプレッサー側から引き出したホースを繋いであります。
通常は、この取出し口はタービンのコンプレッサー・ハウジングに直接設けてあるのが普通です。(=正確なブースト圧を取出す利点とタービンとセットで設計し易い利点があります。)
アクチュエーターは、ブースト圧がセット荷重になれば作動する事で、結果的にブースト圧をアクチュエーターのセット荷重に保つ事が出来ます。
下の図は、ウエストゲート・アクチュエーターをデューティ・ソレノイド・バルブでコントロールする方式の簡略図です。
上の図と比較すると、アクチュエーターにブースト圧を掛ける為のホースに、新たなバイパスを設けてあります。
バイパスの出口は、通常はエアフロメーター〜タービン・コンプレッサーの入り口間に設けてあります。
バイパスさせる(=ブースト圧を逃がす通路)ホースには、デューティ・ソレノイド・バルブが取付けてあります。
このバルブをオンフオフさせることで、ブースト圧を細かく、かつ正確にコントロールしようという意図で、メーカーはこの方式を設定しました。
この方法により、ノーマルの車輌では、ブースト圧をかなり正確にコントロールする事が可能になり、クルマ毎のバラツキも少なくなりました。
しかし残念ながら、この方式は完全な物ではありません。
確かに、ノーマルマフラーのように排気効率が悪い状態では、結構正確にコントロール出来ます。しかし、排気効率が少しでも上昇したり、タービンが非常にピックアップの良い物だったりすると、途端に、欠点が暴露されます。
欠点1
ブーストのコントロールが甘い事で、ブーストのハンチング(=ある幅で細かく上下する。)や、ブーストのオーバーシュート(=設定ブーストを一瞬超えてしまう。)が起きる。
欠点2
アクセルを踏んで放して、踏んで放して、踏んで放してを繰り返す事で最高ブースト圧が段々下がってしまう。(→一度完全にアクセルをオフにして、少し待つとまた設定ブーストまで上がる。)
理由は、
1.アクチュエーターからの配管にT字でバイパスを設定すると、ブースト圧がオンタイムで逃がし切れない。
2.デューティ・ソレノイド・バルブの内径が細過ぎることで、やはりうまく圧を逃がせない。
3.エンジンコンピュータで、バルブをコントロールしていますが、そのコントロールの幅が粗い。など・・
少し話がずれます・・この欠点を取り除く一例として、レーシングアートで、試みる方法を挙げて説明しましょう。
今回行なうのは、ノーマルの2ウェイソレノイドバルブが破損しているせいで、ブーストがアクチュエーターのセット荷重までしかブーストが上がらないECR33のブーストコントロール方式を次の方法への変更です。
この方法によって、アクチュエーターに直接繋がったホースの圧力は常にゼロに戻ります。
3ウェイバルブの配管の内径を充分な容量に上げてあるため、より圧力の管理が正確にコントロール出来ます。
今回の試みでは、バルブをコントロールするのは、とりあえず、ノーマルコンピュータです。(→多分、今ユーザーが装着している車検対応マフラーは排気効率が、充分高くないという”失礼(?)な”ヨミですが・・)
このように、配管を変更することや、コントロールバルブを大容量の物に変更するだけでも、性能は大きく変化する事が充分期待出来ます。
なぜなら・・
アクチュエーターのみのコントロールでは、実際にはセット荷重0.55キロの場合、0.3キロ位から、アクチュエーターが作動し始めます。それは、ウエストゲートが少し開き始める事を意味しています。
当然、0.3〜0.55キロまでは排気ガスがバイパスされながらのブースト圧になり、結果として、遅いクルマになります。
それに対して、今回の3ウェイバルブの方法では、アクチュエーターは常にゼロフ設定ブーストというコントロールを受けます。その為、より細かく、より速くする事が出来ます。
実例として、きちんと配管した”性能の良い”ブーストコントローラーを装着しているクルマで、
ブーストコントローラーをオフにした0.55キロと、オンにして最低ブーストにした0.55キロでは、明らかにオンでの0.55キロが速いはずです。
※本当の(?)実際では、オフで0.55キロになる事はあり得ません。多分、0.6キロ位になるはずです。ここでは便宜上の説明になります。
※あくまで、”性能の良い”ブーストコントローラーでの話です。この実験を行なって、その差がハッキリ体感出来なければ、それは、ダメなコントローラーという結論になります。
最後に、デューティ・ソレノイド・バルブの構造を少し説明しておきましょう。
左図の青い部分が、プランジャーです。マイナスとプラスがある線が、コイルです。
まず、2ウェイバルブから・・
左は、電源オフの状態です。プランジャーはスプリング(図中には表示してありません。)の力で図の上方に押し付けられているので、@とAの配管は通じています。@〜Aはエアが自由に流れます。
一方、電源がオンになると、プランジャーは図の下方に押し付けられて、通路を塞ぎます。@とAはエアが流れなくなります。
つまり、2ウェイバルブはエアの流れを切り替えるのではなく、流れをオンフオフするだけのバルブと言う事になります。
一方、3ウェイバルブの方です。
電源オフでは、Bの通路を塞いでいます。つまり、オフでは@とAが通じます。
電源オンでは、プランジャーが図の下方に押し付けられて、Aを塞ぐので、@とBが通じます。
このバルブなら、圧力をゼロフ設定ブーストにコントロールし易くなります。
※もちろん、3ウェイなら何でも言い訳ではありません。内部の配管の内径アップや、コイル巻数などによる高性能化が必要で、その性能をどこまで上げるかはメーカーの開発姿勢が現れる所です。(FD3Sで言うと、30万台以前より40万台以降のソレノイドバルブの方がやや性能アップしています。・・しかし、つい先日その性能アップのバルブが破損していましたが・・)