楽しくいきましょうよ!その2
かなり前から初期点検の予約を貰って、作業に入る日、その人はやって来ました。
ちょうど、レーシングアートの敷地内にクルマが溢れていて、私は少しイライラ状態でした。折角きちんと挨拶してくれるKWさんに『ハイ!初めまして!』とそこそこに挨拶して道路上に止めたクルマに乗り込もうとする私に、おろおろ(?)した足取りで付いてきます。
「あの〜・・このクルマすぐにエンストするんで・・」と。そんなクルマはもう慣れっこですから、『ハイハイ。』と上の空で答えて動かそうとすると、言われた通り物凄くエンストし易いクルマです。でも、一回エンストさせれば、大体の状況は理解出来るので、そのまま何の不都合も感じないままリフトまで移動させます。
すると、本当に心配そうに自分のクルマにトボトボ・・と付いて来ます。それも、とっても暗い顔をして・・・
その様子をクルマの中から見て、『メールのやり取りでは全く感じなかったけれど、この人よっぽど暗い性格なのかな?』と、勝手に決めつけていました。
クルマから降りると、「ね!ひどいクルマでしょう?」と言うので、『確かにエンストし易いけど、こんなクルマは多いので、気にしなくて良いですよ!』と答えます。
「実は昨日、別のショップで持ち込みのパワーFCを現車合わせして貰ったらこんなクルマになってしまったのです。」
「ちょうどブッシュ大統領が来てたので、都内は大渋滞で信号で止まる度にエンストしてました。」
「新宿までに50回以上エンストして、このままエンジンが掛からなくなりそうで・・」
「恐いので、路地に入って止めました。」
「クルマが少なくなるまで、何時間かクルマを止めていましたが・・」
「あまりにひどいと考えて、ショップに電話してクレームでセッティングをやり直して貰う事にしました。」
「試乗チェックをしている筈なのに、このまま渡すなんてひどいですよね!」
と暗い顔のまま愚痴っています。
私の本業は”愚痴を聞く仕事”ではないので、『仕方がないよ!』『でも、原因は解っているからセッティングをやり直せば、この症状は直りますよ!』『リセッティングにお金を取られなければ、良いじゃないですか?』と答えて、予定の作業を進行させます。
予定の作業が終わっても、まだ暗い顔をして、「また、明日そのショップまで行く予定だけど、無事着けるかどうか心配なんです!」と言います。
仕方が無いので・・とりあえず、エンストしないようにアイドル調整をします。でも、ちゃんとしたセッティングになってから、元に戻す手間が発生しない程度の調整です。『とりあえず、エンストし難くなるはずだけど、原因はセッティングだから・・ね!』と話して、その辺りを一周するように伝えました。
ぐるりと回って、急にパアッと明るい顔になって帰ってきました。
げんきんなものです。調子が少し良くなると、決まってこんな”劇的な変化”を示すのがレーシングアートのユーザーです。
「ありがとうございます。」「すごく乗り易くなりました。」「エンストも、2速でアクセルペダルを踏まずにクラッチを繋いだらエンストしました。」・・・(→それは、普通は当たり前?→普通のクルマなら→レーシングアートで作業していないクルマなら??)
その後の話では、明るく話していました。良かった!良かった!・・・と思っていたら・・
その翌日今度は予約無しで立ち寄りました。
「言われた通り・・エンストしなくなりましたが、今度はアイドルでパンパン言うようになって・・うるさいんです。」と、また、元の暗い顔に戻ってしまいました。
『原因ははっきりしているのだから、そんな顔をする必要はないでしょ!』と言っても、「う〜ん・・・もう二度とそのショップには行きません!」とため息まじりで。
ショップを信じ過ぎてはいけません!そんなに簡単に信じるから、どこかで”裏切られた!”と思ってしまうのです。自分が選択したショップはそれだけのショップなんだ!と判断すれば良い話で、自分が思っていたショップではない!と感じるのであれば、行かなければ良いだけの事です。
もっと、客観的に判断しましょうね!
それに、原因ははっきりしていて直すのも簡単です。そんな事で何故そんなに暗い顔をしてしまうのか?何故そんな単純な事で悩むのか?・・
答えは簡単です。『楽しくいきましょうよ!』です。
そうそう、ついでに言っておきますが、レーシングアートに相談に来ようと真剣に悩んでいる人は、決して余計な事をしないで、そのままの状態で来てください。私は、なるべく無駄な費用が出ない方法を考えます。余計な事をしてからやってくると、本当に無駄な費用が発生してしまいます。現状のままで、一番良い対処方法を考えるのは私の役目です。それまでは、1円も無駄にしないでください。
特に今回のように折角先にレーシングアートに予約したのに、その後、実際の作業の前に、全く無駄な費用を出すのだけはやめてください。折角、レーシングアートに相談したのに・・・勿体無い・・!
※初めに、エンストし易かったのは、パワーFCのセッティングミスです。多分、そのショップのヒラ(?)のメカニックがセッティングをチョイス(?)したのでしょう。それで、アイドルが上がり過ぎたか何かで、無理矢理アイドル回転を下げようとした。
※チョイス?・・・現車セッティングと言うと、セッティングしたクルマの数だけセッティングがあると思っているのは素人の浅はかさ(?)です。実際には殆どのショップで、幾つかのパターンを作成していて、そのうちのどれかをチョイスするのが、ごく一般的な方法です。現車セッティングなんて、皆さんが神(?)のように信じている程、そんなに良い物ではありません。
※私が対処した方法は、アイドル回転を少し上げる方向にした。(→単純には上げることになりますが、エアアジャストスクリューを少し開けただけ=そのショップでは、目一杯締め込んでいただけだから。)
※リセッティングでは、今度は大幅に濃い方向でセッティングしてくる筈、と考えていました。多分そのショップの開発者はそんな性格だから・・・と予想して、その通りの結果が出ました。