精度を出す!
1000分の1mmを測定することは、不可能と言われています。もちろん最近では、レーザーを使用することで可能になってきましたが、私達がごく普通にマイクロメーターを使用して測定することは、不可能です。
しかし、その不可能な数値を測らなければ、結果が出せない時があります。
10年位前に、突然、前勤めていたショップの、前の社長に、「タービンのオーバーホール技術を修得してくれ!」と言われました。当時日本には、そういう文献もマニュアルもありません。
仕方なく、手探りで中古タービンを片っ端からバラシ、清掃し、考えられる可能な全てのサイズを測定していきました。どこをどこまで測定すれば良いのかなどは、全く解りません。
とにかく、初めの10個は、全く何も得られませんでした。「こんなことをしていて、何か解るのだろうか?」と非常に不安になってきた頃、オーバーホールしたノーマルタービンの内の一個が、滅茶苦茶調子が良好で、低いブーストでもパワーが出るし、ピックアップは良いし、「本当にこれがノーマルタービンか?」と疑う位良い物が出てきました。しかし、同じようにオーバーホールを行なった次のタービンは、普通でした。
早速、出来の良かったタービンをバラシて、再度測定しました。そうこうする内に、何個かに一個、時々良好なタービンが出来ます。
その時、それまでのデータを全て、見直していきました。
答えは、訳も解らず、とにかく、測定しまくったデータの中にありました。
タービンシャフトのフレにありました。
- 0.000〜0.003 非常に良好。パワーもレスポンスも問題無し。
- 0.003〜0.005 良好。パワーは、そこそこ。ノーマルと同等。
- 0.005〜0.008 可。ただし、高回転ではなるべく使用しないように。ハイフロータイプには、不可。
- 0.008〜 使用不可。オーバーホール後、1,000km以内で破損する可能性大。
ちなみに、ギャレットのタービンシャフトのフレは、0.000です。シャフトの断面は、ほとんど真円です。ここにも、ヒントがあったのですが・・
では、どうやって、1000分の一を測るかというと、答えは、測定回数です。安定した数値が出るまで、測定します。初めは、100を超えました。しかし、経験を積むと少しずつその回数は減ってきます。(減っても20回位ですが・・)
明らかに、小さい数値と明らかに大きい数値を外して、最も多く出た数値を真の数値と考えます。標準偏差で解りにくければ、オリンピックの体操の得点で最小と最大を引きますね。あれです。(ちょこっと違うけど、この辺は、難しく考えないで下さい。)
ただ、この測定中は、どうしても息を止めて全神経を集中して、測定しています。それで、気を付けないと、時々窒息しそうになります。(息をするのを忘れてしまう。)
集中力に自信がある人は、2万円程度のマイクロメーターを買って、挑戦してみて下さい。コツは、もちろん、測れるまでやることです。