ゴムの材質の話

通常、クルマに使用されているバキュームホースの材質は、2種類あります。

1.クロロプレンゴム
 耐油性は、比較的優秀だが、
 耐候性、耐熱性がやや低い。
 接着性が比較的優秀。

2.エチレンプロピレンゴム
 耐油性に劣る。
 耐候性、耐熱性は優れる。
 接着性、耐引裂性に劣る。

1番が、97年夏以前に採用されていたと思われるバキュームホースです。
 上記の特性を改めて念頭に入れて、今まで経験してきたことを、考えると一人でなるほどと納得してしまいます。
 耐候性、耐熱性がやや劣ることで、タービン交換やエンジンルームの温度が上がる車輌の場合、半年位で新品に交換した方がいいと考えていました。実際、全てのバキュームホースを純正新品に交換した、ユーザーもいます。
 接着性は、結構良好で、新車の状態でいきなりフルブースト掛けたりしないで、充分な慣らし運転を心掛けたユーザーの車輌(FC3Sの時)は、ブーストが漏れるトラブルは比較的少なかったと記憶しています。

2番は、97年夏以降採用されたバキュームホースです。
 FD3Sは、ブローバイガスにオイルが霧状に混じり、全てのバキュームホースの内側にくっ付いてしまいます。
 それは、新車の状態でも発生しているため、購入してすぐでも、バキュームホースは、結構ぶよぶよした感じになります。
 また、1番のホースは、軽く手で引っ張ってもゴムの一部がくっ付いていて外れませんが(だからと言ってブースト圧が漏れないわけではない!)、2番のバキュームホースは、スポンと抜けてしまうことが多いのです。

 これらのことをふまえて、レーシングアートでは、二重構造のバキュームホースを採用しています。
つまり、外側が、耐熱、耐候性を重視して、エチレンプロピレンゴム、内側が耐油性を重視してクロロプレンゴムです。

 実は、この二重構造のバキュームホースは、数年前まで、あるアフターマーケットメーカーで採用されていました。しかし、耐熱、耐候性共に低く、3ヶ月位でぼろぼろになってしまい、とても使用できるものではありませんでした。
この経験から、二重構造のバキュームホースでも充分検討し、テストも行ない採用することに決定しました。

 話は、少しずれますが、バキュームホースとして、最も優れているのは、フッ素ゴムですが、これは非常に高価なため、通常使用されません。(規格品でも1m当たり、云万円を下ることはありません。また、4φ位の規格品はありません。)
 また、通常ショップで採用されているシリコンホースは、機械的強度が低く金属のバリなどで表面が傷付くと、そこからプルンと切れてしまいます。さらにオイルに対しても、溶けてしまうため、あまりお薦めできません。
 右側の写真は、FD3Sで約半年間装着した例ですが、シリコン部が溶け出して、穴が開きブーストが掛からなくなったシリコンホースのサンプルです。(穴の位置が解るように金属棒を差し込んであります。)