まずは、アライメント修正?
1.新車からアライメント調整や足廻りパーツ交換などを行なっていない。
2.更に、大きくタイヤ、ホイルをぶつけていない。
3.純正車高調ではない。
の“3つの条件”を満たしていれば、大体の場合、アライメント修正のみで結構走りやすくなります。
アライメント修正が必要になる対象のクルマの症状は・・
A.直線走行中、見えないくらいの道路のワダチでもステアリングを細かく左右に取られ、気が付くと常に細かく修正している自分がいる。
B.大きめのワダチを前方に確認すると、思わずステアリングを握る手に力が入る。
C.高速コーナーに入る直前に、気が付くと手の平に汗をかいている。
※手の平や足の裏は通常暑くて汗をかくのではなく、精神的な緊張が主な原因です。本人がはっきりヒヤッっとする自覚する前の段階です。なお、はっきりヒヤッとする場合は、アライメントもブッシュを含めた足廻りパーツに大きなダメージを受けていると考えられます。
D.車庫入れなどのスエギリで、やけにステアリングが重いと感じる。
E.正常なFDなら、車庫入れではステアリングは心配になるくらい軽い物です。しかし、一旦走り出して少し重み(=しっとり感)が増し、コーナーの踏ん張りでは横方向をしっかりとサポートします。首都高などの段差が激しく、路面も荒れている高速コーナーを常識的な(?)スポーツ走行で抜ける時でも、一切の不安感はありません。逆に「何だ!つまんないな〜!」位の感覚の筈です。
F.A〜Eの性能は、FDでも一番径が細く、容量が一番貧弱と言われるスタンダードショックでさえ、当たり前の性能です。また、10万台〜40万台前半までは、走行距離がかなり進んでいても、当たり前の性能です。(=ブッシュのヘタリが少ないという意味です。)
※ただし、40万台後半からは一部のブッシュが柔らか過ぎる物に変わってしまい、少しでも無理な力を掛ける走り方をしていると、最悪ブッシュ交換から・・という事もあり得ます。
作業の進め方:
1.ダメージの度合いを点検します。簡単な目視点検で特に数値上問題が無ければ、修正を行ないます。ただし、修正と言えども、一晩預かりになります。
2.作業に入る前に、ブッシュを細かく点検します。事故などの無理な力がブッシュ自体を大きく歪ませていると、アライメント修正の効果は、100%出せません。かなりひどい場合は、画像で証拠(?)を撮ってオーナーに後で提示して説明します。
3.主にロアアームブッシュの取付ボルト&ナットを全て緩めて、完全フリーの状態にします。フリーな状態で、必要最低限のCRC556を最小限度の適正ポイント箇所に塗布します。
※他のページで「556なら、心配要らない!ゴムに悪さはしない!」と述べている箇所があると思いますが、常識の範囲の量の事です。低分子の556成分が高分子構造のゴム内部に入り込むのは当たり前、しかし、すぐに乾燥するので、適量なら問題を引き起こさない。と言っているのです。
この作業では、“適量”は非常に難しいので、絶対に真似しないでください。量や、塗布回数が多過ぎたりすると、即、ブッシュ交換になってしまう危険があります。
4.全てのボルト&ナットの芯出しを1/100オーダーで行ないます。ここが一番難しい作業になります。ブッシュ自体に長時間歪みの力が掛かっていたクルマはこの作業時間が大幅にアップする事もあります。(→なるべく、歪みを取った状態で芯出しをするのがかなり困難なためです。)
5.完璧な芯出し作業が終わったら、仮止めして目視点検を行ないます。
6.特に異常が認められなければ、本締めに入りますが、この時、既にトラブルを抱えているクルマは、正式な本締めが不可能な事があります。
その時は、ボルト、ナットを一旦全て完全に外してしまい、ボルト側フランジ面やサブメンバー当たり面に、特殊な柔らかめのグリスをほんの少量だけ塗布します。
7.やっと、本締めです。規定トルクの上限95%が目安です。しかし、この時ボルトに少しでも違和感(=過去に一度でもオーバートルクを掛けた雰囲気がある場合。)が認められる場合には、そのダメージによっては新品交換や、やや低いトルクにします。(=低いトルクで締める時にはボルトのネジ部に更に特殊なグリスを極々少量塗布します。)
8.リフトから一旦外してアライメントを目視で点検し、異常な変化をしていないかをチェックして作業は終了です。このチェックで特に異常な動きが無ければ、特に特別な走行チェック(=きつい条件の走行チェック)はしません。
アライメント修正で終わるクルマは、元々大きなトラブルを抱えていないクルマなので、走行チェック時のポイントはこちらが予想している結果が出ているかどうかだけが問題になります。
作業後のオーナーのコメントに注意:
A.ステアリングが軽過ぎて怖いくらい。でも走り出すと安心出来る。
B.直進は安定し、コーナリングが楽しい!(→作業前のステアリングを握る過大な力の強さに気が付く。)
C.ついつい、コーナーに突っ込んでしまう。
D.今まで一番苦手だったS字コーナーが、一番気持ち良い!
E.気が付いてみれば、かなりの距離をストレス無く走り切ってしまった。
正常に作業が終了すれば、これらのコメントが得られる筈です。
しかし、例え、私は正常と考えていても、どれか一つでも欠けている場合はどこかにトラブルが潜んでいる可能性があります。
その場合の対処方法は、次回のアライメント修正の結果を精査して、潜んでいるトラブルを“見える形”にする事になります。
なお、この作業は両刃の剣とも言えます。一度アライメント修正を行なっても初回に全てを感じ取れるオーナーはそんなに多くありません。
作業後に「凄〜く、良くなりました。」と言ってもA〜Eを全て100%感じ取れるオーナーは少ないものです。
やがて2回目がやってきます。「急に変な感じになった。」「一度高めの段差にタイヤをぶつけた後、ワダチでステアを取られる!」・・
点検をすると、今度はアライメント数値に悪影響が出ている事が多いのです。これはある意味仕方がありません。
足廻りが良くなると知らず知らずの内にギリギリにコーナリングしてしまいます。昔、セナがモナコの「ガードレールにあと1センチ近付けられる!」と言っていたとテレビで盛んに言っていましたが・・そこまでギリギリでなくても大体のオーナーはそうなってしまいます。
しかし、結構速度が高く、ぶつける角度が悪ければ、即足廻りに悪影響が出てきて、なおかつ、一度良い状態を知ったオーナーには、悪くなった事がハッキリ解ってしまう。
パワーもトルクも、水周り、電気、足廻りも・・一旦良い状態を知ってもその時はあまり理解出来ません。しかし、その状態が僅かに下がってしまうと必ず、気付いてしまいます。
2度目の作業後、今度はかなり慎重に運転していても、やはりどこかにぶつけた!という感覚はすぐに解ります。その時は、今度はかなり暗〜い顔でやってきて、「多分、ぶつけました!」と泣き付いてくることになります。
更に3回目が必要になる頃には・・ブッシュの交換を考え始める事になってしまいます。
ブッシュの項目はまた別に記載しますが・・ここまで敏感になってしまったオーナーは全てを感じ取れるようになって、私の指摘を全て理解してしまう事になります。
ブッシュもショック、スプリングも全ての違和感を正確にどこが悪いかは解らなくても、何かが変!という違和感を感じ始めます。
そうなる事は、実に贅沢で、クルマが趣味と考える人には願ってもない事、或いは一生の目標かもしれません。しかし・・・
一旦見えてしまった事は二度と見えなくなる事はあり得ません。
一度見えてきた“微妙な違和感”を完璧に修理するには、お金も時間も掛かります。
しかし一方で、少しでも悪いまま走り続ける事はかなり苦しい筈です。大抵のオーナーは暫く乗らなくなったりします。でも、それって勿体ない事ですよね・・・
だから・・・例え、アライメント修正でも作業決定前に必ず意志確認が必要になります。
・・・・『あなたには、その苦しさを乗り越えられる“精神力”はありますか?』と・・・・・