踏み過ぎても踏まな過ぎでも問題が起きます。
初めに、レーシングアートの会員ではあり得ない話だと思いますが、パッドの残量をギリギリまで使用するのは、キャリパーに対して問題があります。
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本題に入ります。チンダル現象を利用したエア抜きをさんざん繰り返して気が付いた事があります。踏み過ぎでも踏まな過ぎでもキャリパー内壁を傷付けていると言う事です。
正確には、踏み過ぎと言うのは、少し違います。ゼロか、100かでガツンとブレーキを踏む事です。これは一般のドライバーが殆ど行なっているブレーキングです。本来、ブレーキペダルの操作は細かい微調整が段階的に必要になりますが、どうも一般ドライバーにはその意識がないようです。また、最近のクルマの場合、完璧なエア抜きを行わないとこの微調整は体感出来ないのも事実です。(=パッドの材質がほぼ100%セミメタルになっている事と、ブレーキの前後バランスをフロント側に傾け過ぎた設計の両方による弊害かも知れません。)
レーシングアートで、エア抜きを行なったオーナーは、まずこの踏み過ぎによる傷を付け始めます。
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外側の薄い青がキャリパー 中立状態では、ピストンは浮いた状態になっています。 |
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それまでと同じようにゼロ-100の踏み方で、ガツンと踏んだ時きちんとエア抜きを行なっているので、パッドをきちんと押し込んでブレーキはきちんと作動します。 そのため、瞬間的にピストンは内壁に“突き刺さる”状態になると考えられます。 |
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初めてこの破片を発見した時は、何だ!?と驚きました。ピストンが内壁を削った形だったのです。 しかし、エア抜きを繰り返すと、初めてレーシングアートでフルード全交換を行なったオーナーは、2回目のエア抜き作業で殆どこの破片が出てきます。 |
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街中でもよくキィ〜ィと言わせながらブレーキングしている自称走り屋に出くわします。 この異音はパッドの端のエッジから発生しているのは、良く知られた事です。このエッジ部分を斜めにカットすると殆どの場合、異音は解消されます。 |
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一方、踏まな過ぎの場合、異音が出ていない時も、パッドがそっとローターに触れているので、同じ事が発生します。 そのため、内壁を細かく傷付けるようです。 |
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上の画は、踏み過ぎの破片を薄くした物と考えてください。 ちょうどこのような破片が出てきます。一方、フルードの汚損は非常に少なく殆ど透明です。しかし、この踏まな過ぎのパターンでは破片を全て吐き出させるのは非常に困難です。 |
ブレーキは、ガツンでもなく、そ〜っとでもありません。ペダルやシリンダーの遊びがゼロになるまでは、そ〜っと。そこからパッドとローターが触れるまでは少し力を入れたそっとで。パッドとローターが触れたのを確認したら、ググッとリニアに力を入れていきます。タイヤがロックする寸前で、少し力を抜いてグリップさせ、またググッと踏み込むを繰り返して、最短時間で止まれるようにします。
もちろん、急ブレーキではありません。
イメージ的には、ブレーキペダルを踏んでいる時間を如何に短くするか?です。ペダルを踏んでいる間はローターもキャリパーも温度がドンドン上昇してフルードも含めて傷めます。
ペダルを離した瞬間から、温度が下がります。走行中であれば、かなり短い時間でブレーキ系統の温度が下がり、次のブレーキでは最良の効きが得られる筈です。
※ここに記載した内容は、お仕着せではありません。ただ、何度も作業を進めていて『勿体ないな〜!』と感じるので、クルマを傷めない=長持ちさせるためのアドバイスだと思ってください。
また、「そんな事まで注意しながら運転しなければいけないのか!」と感じる会員の方は、なんら改める必要もありません。(=ただし、エア抜き作業時間が延びると言う事は、工賃が上がると言う事であり、キャリパーが傷むと言う事は、近い将来、キャリパー全交換が待っていると言う事は認識しておいてくださいね!)
あくまでも、自分の判断で行なってください。