チューニングエンジンについて

 エンジンの性能についての話は、いろいろな要因があり、一概に一つの点のみで評価は出来ません。しかし、あえてここでは、カーボンの発生に着眼点をおいて話を進めます。

 右の写真は、ローター3種


 ※これらのローターは、エンジン分解後、そのままの状態です。
  もちろん、特に洗浄などはしていません。ロータリーエンジンのシール部分

 ロータリーエンジンは、ローターの頂点にあるアペックスシール、サイドシール、コーナーシールによって燃焼室を形成しています。
 これらのシールのクリアランス(隙間)が、チューニングの重要なポイントになります。
 いかにパワーの出るシールを作製するかが、”腕”になります。

 

この3種のローターをカーボンの発生具合に眼をおいて観察すると、非常に面白いことが解ります。


レーシングアートのローター

 レーシングアートのカーボン

 ほとんどカーボンが付着していません。微かに燃焼が始まる側のサイドに、少しだけ焼けた痕があるだけです。

●×スポーツのローター

●×スポーツのカーボン

 一言で言えば、真っ黒。カーボンだらけです。(=カーボンてんこ盛り?)

 特に、サイドシールとコーナーシールの隙間からローター内側に向かって、カーボンが吹き抜けたような痕があります。
 それもかなり内側まで入り込んでいます。

ノーマルローター

 ノーマルのカーボン

 ノーマルエンジンの普通の状態と考えて下さい。(=普通のロータリーエンジンはこんな感じです。) 

 新車から使用したノーマル純正エンジンで、全走行距離、86,000km。かなり回したエンジンで、距離の割に、かなりヘロヘロの状態のエンジンでした。

 このローターの状態を頭に入れて、各エンジンのインプレッションを読んでみて下さい。
 上のエンジンは、ブリッジポートエンジンにも関わらず、2,000rpmから、安定した太いトルクが発生し、非常に乗り易い。アイドリングも非常に安定していて、800rpmのアイドル回転でも、安定します。1速やバックギアで不用意にクラッチを繋ぐと、ホイルスピンしそうな勢いで、ドドッ、ドドッという感じで発進します。(もちろん、普通に発進しようとしてクラッチを操作した場合の話です。)「これが、本当にブリッジポートですか?」というのが、試乗した人全員の共通した感想です。
 中央のエンジンは、サイドポートエンジンです。エンジン組立て直後から、アイドリングがなんとなく不安定で、慣らし中にプラグがカブって、エンジンが掛からなくなったことが2〜3回あり、ユーザーの話だといつも不安な気持ちで乗っていた状態だったと言うことです。
 結果的に、このエンジンは、慣らし直後に、原因不明のエンジン破損になってしまいました。
 下は、ただのノーマルエンジンですが、ユーザーの使用方法が、かなり厳しく、ヘロヘロ、ヨレヨレというのがぴったりで、訳の解らないトラブルが発生し始めていました。(普通は良いのに、突然信号待ちでエンジンがカブり始めエンジン停止、しかし、すぐに始動出来て、なんともなかったかのように普通に戻るという症状。)

 ”レーシングアートのエンジンが、何故こんな結果になるのか?”というと、多分、シール性が非常に良好なため、低回転でも『完全燃焼』になり、カーボンが発生しにくいのではないか?そのため、ブリッジポートという低回転ではどう考えても不利な条件なのに、「高いトルク=乗り易い。」という結果が得られたのではないか?

 下から、ぶっ太いトルクを発生する非常識な(?)エンジンは、ロータリーエンジン搭載車に一度でも乗ったことのあるユーザーは、一度体験してみる価値はあります。