水漏れ修理直後のエア抜き作業
冷却水関係の実際のエア抜きの方法や、その必要性などについて少し詳しく記載してみます。
必要もないのに、「車検だから、冷却水の交換をやるか!」と言っちゃって??完全に冷却水を抜いてしまってオーバーヒート街道(?)をひた走ってしまった人の事を別のページで記載してありますが・・
実際、その行為が何故いけなかったのかを、皆さんが本当に理解しているとは思えないので、まずその部分からいってみましょうか?
新車の状態から、特にやってはいけない事を行なっていないクルマでは、例えメンテナンスが多少悪いからと言って、そんなに冷却水系にエアが混入している訳ではありません。(=もちろん、時々2個のラジエターキャップを開けて正常な位置まで追加するのは最低限のメンテですよ!)
しかし、一度完全に冷却水を入れ替えると・・
LLCや、水道水には当然微少な気体状のエアが混入しています。この事は水道水を暫くペットボトルなどに入れて放置していると、内壁に空気の泡がくっついてくる事で解ります。これらは、微少な気体として存在していたエアです。(=“中”程度のエア)
更に、煮沸させてみると・・100度になってぐつぐつ、ぐつぐつ煮込む(?)と勢いよく泡が出てきます。一度沸点に達して10〜20分位沸騰させていると、液体中に入り込んでいたエアが溶けきれなくて出てきます。
魚とかが水中でエラ呼吸出来るのはこの液体に溶け込んだ空気のお陰です。あと、水道水の塩素を抜くのに暫く煮沸しましょう!って行為も本来常温で気体として存在するエアを抜く事が出来るからです。(=“小”程度のエア)
冷却水を完全交換という行為は、主に、この2つのエアを抜く必要が新たに出てくるのです。そのため、作業後充分なエア抜き作業が必要になるのです。
更に・・冷却水交換では、その作業途中でエンジン内部に大きなエアの空洞が出来ます。この大きめのエア(=空洞)をウォーターポンプのフィンのエッジが切り裂きます。細かいエアにして冷却水全体に大きいエアを作ってしまいます。この大きめなエアはエンジン内部の水路にあるバリや型取りの砂痕の凹凸に入り込みます。(=“大”程度のエア)
これら、全てのエアを完璧に抜かなければいけないのです。この作業は、ディーラーやショップ任せには出来ません。通常は、ある程度のエア抜きを行なってその「残りは自分でやってね!」って事になります。
因みに、レーシングアートで現在行なっている“とりあえずのエア抜き”は最低でも15回を越えます。初めの4回目までは、最低97度以上に上げて、65度以下に下げて行ない、その後の15回目までは、最低15分以上走り回って出来る限り上げて、今度は完全に冷やして(=外気温まで)・・行ないます。後半のエア抜きは、かなり面倒臭くて時間も掛かります。しかし、ここまで行なっても“とりあえずのエア抜き”になります。
昨年9月以降に水漏れ修理を行なったオーナーには、『冬の間はエア抜きが終わらないから、エア抜きは初夏まで掛かると思ってください!』と伝えました。これは、小程度のエアが抜けるには、100度以上に少なくとも10分以上になる必要があるためです。
“とりあえずのエア抜き”で、大程度のエアが抜けて、中程度は20%が残ります。あとは・・外気温が上がるまで待つしかありません!
しかし・・・こんな話は多分レーシングアートでしかしていない筈です。当然、とんでもない話をしているのです。でも、仕方ありません!
理由は2つ。
1.水漏れ作業後の4回目までのエア抜き方法:
エンジンを10分程暖気します。しかし、その時の水温は75度以下です。
エンジン回転を少しずつ上げていきます。(500回転ずつ少しずつ・・)
最終的に、6,200回転まで上げます。回転を維持して約3分で97度近くまで何とか上がりますが・・・その後急激に下がり始めます。95→93・・
仕方がないので、そのままアイドリングで維持します。約3分で電動ファンが回りますが、約1分で止まります。その後は殆ど電動ファンも回らなくなってしまいます。つまり、97度以上に保持出来ない!
エアコンスイッチをオンにして、水温が75度以下になるのを待ちます。(=水漏れ修理が成功なら、2分掛からずに下がります。)その後は、65度に下がるのを待ちます。
ついでに言うと、この初期エア抜きでは、ラジエターキャップを開けると水面は見えません!
2.ある程度の負荷を掛けて、走行を行ないます(=あまり高い負荷は掛けられません。だって、エアが大量に入っている状態ですから・・・):
なるべく、水温が上がりやすくするためにわざと15分回転高めの低速走行、エンジンを止めて、5分待ち。更に15分走行、5分停止。を繰り返します。
この時点でかなり大量のエアが残っているので、一度水温が上がると下がりにくくなってきますが・・5分以上停止が続くと下がってきてしまいます。
なるべく、水温を上げたいのですが、通常105度を超えることは出来ません!
このエア抜き作業を繰り返し行ないます。15回目くらいでやっと減りは15mm前後になりますが、外気温が前日のエア抜き作業で前々日に対して5度以上上がると、口から50mmまで平気で減ります。
これらの事から、外気温が十二分に上がるまで、完璧なエア抜き作業が終了出来ない事は解って貰えると思います。
なお、95%水漏れ作業が完了していて、『もう少し様子をみましょう!』と話しているオーナーでも、外気温25度でも、殆ど電動ファンが動かなくなって、たまに動いてすぐ止まると・・「ああ、良かった!電動ファンは壊れていないんだ!」と感じます。
そうなってくると、『今付いているファンコントローラーの配線がボロボロで、将来的なトラブルの原因になるかもしれないから、外して欲しい!』と忠告していたオーナーで、「どうしてもファンコントローラーだけは外したくない!」とかなりの抵抗(?)を示していた人が「外そうかな〜。」と、「だって、作業後キャンセルしたままでコントローラーを使っていないから・・・」と。
電動ファンコントローラーを付けるのも、もちろん、あなたの自由です。10万台の純正ファンコントロールスイッチに交換するのも、自由です。
しかし・・・きちんと対策をすれば、水温など上がりません!
・・・トラブルの本当の原因を探して、直すのは決して楽ではありません!でも、それをしないで他の“対策品”を取り付けるのは、メーカーの口車に乗っているだけではありませんか?
本当に、完璧なクルマであれば・、電動ファンすら回らないのに・・・