純正ホースの外し方とその後の処理、ホース取付

 ホース選択のページでも述べたように、殆どのホースは内側でパイプに“一部”張り付いていることが多いのです。

1.外す方法
 専用工具を使用して、ホース外側を軽く揉み、ホースとパイプに微少な隙間を作り、その隙間にCRC556を少量塗布します。数秒待ち、専用工具で硬さを確認して少しずつ回転させて緩めます。
 もし、かなり硬く変質している場合は、外周にCRC556を塗布後数分待ち、パイプとホースの隙間に専用工具の針先を丁寧に差し込み、全周に渡って丁寧に剥がしていき、再度専用工具でパイプに無理な力が掛からないように注意しながら、ホースを平行に引き抜きます。
※引き抜く時に必ず平行に引き抜くことは非常に重要です。特に30万台以前のFDでは、一個だけU字のホースが外し難く、引き抜く先のスペースが殆どありません。まして、硬化してしまっている場合は、殆ど絶望的です。
 しかし、丁寧な作業を行えば必ずうまくいきます。

2.外した跡の処理
 通常の状態なら、ウエスで丁寧に拭き取るとパイプ面には何も残りませんが、張り付きが強烈な場合は、ゴムの一部がパイプに残る場合があります。
 この場合も、パイプ自体に無理な力が掛からず、なおかつ、表面に傷を付けないように充分注意しながら、ゴムの破片を綺麗に取り除きます。
 もし、この作業の手抜きを行なうと、必ず、100%の結果は得られません。
 最後に、指先の柔らかい部分で全周をなぞって傷やゴムの断片が残っていないことを確認します。

3.ホースの取付
 取付で重要なのは、“
適切な長さ”にすることです。長過ぎたり短か過ぎるとバルブに無理な力が掛かり続け、近い将来バルブを破損することになります。
 “適切な長さ”とは、非常に難しいもので、慣れない内は少し長めにカットして一旦取付けます。取付状態を確認してみて手で振動を与え、どこにも無理な力が掛かっていないかを確認します。ほんの少しでも無理な力が掛かっていれば、もう一度取り外してカットし直します。(=手で振動させただけで無理な力が掛かるような取付ならエンジンの振動や走行中の振動では1回の走行で割れてしまう事すら考えられます。)

4.ホースのカット方法:(=優れた材質にはそれなりの作業基準が必要です。)
 現在、採用しているバキュームホースは、耐候性、耐熱性及び、耐油性共にかなり高いレベルでバランスしていますが・・ただ、ひとつ大きな欠点があります。それは、耐引裂性に劣るのです。
 つまり、ほんの少し傷が出来るとそこから縦に断裂します。
 そのため、カット方法には充分な注意が必要です。レーシングアートではドイツ製のハサミを使用し、ホース5本をカットするとフィンランド製シャープナーで研ぎながらカットしています。
 もし、同じ効果を目指すならカッターナイフのなるべく上等な刃(=
特に刃物類の場合、安物では絶対に不可です。)を使用し、一度カットしたら、すぐに新しい刃を使用する方法を取ってください。カットする台には、プラスチック製まな板(=柔らか目の物を選びます。)が適しています。
※もし、どこかに作業を依頼する時、カットする時に“
ニッパー”を使用しているのを見かけたら即座に作業を中止した方が無難です。(=ニッパーはどんなに高価な物でもすぐに刃先が傷みます。本来の目的と異なるので、ニッパーだけはやめてくださいね!)
細かい部分に注意が向かないメカニックには、この作業は無理です。(=ただし、外科医が使用する高価な“
外科手術用ハサミ”はこの作業に向いています。あまりに高価過ぎて一般人には無理ですが、そう言う職場の人で切れ味が落ちて廃棄処分になったハサミが入手できる人には可能な選択です。)