トルクレンチの使用方法=トルク体得方法

 トルクレンチには、ニードルトルクレンチプリセットタイプ=設定トルクに達すると“カチッ”音がするタイプ)のトルクレンチがあります。
 バネ鋼の反発力を利用してバネの歪みを測定するニードルトルクレンチの方が初心者には向いていますが、今では、通常購入出来るのはプリセットタイプのトルクレンチになってしまい、
トルクの勘違いを引き起こす可能性があります。
 勘違いとは、「
カチッと音がすれば、当然正しいトルクを掛けた!」と思い込むことです。実際にニードルトルクレンチを使用していれば、力の掛け方や掛けるスピードで誤差が生じる事を体験出来るので、トルクの何たるかも体感しやすいので、何度か経験する内にだんだん理解が深まるのです。しかし・・・入手しにくくなったからには、それなりのポイントを先に拾得する必要があります。
1.速すぎるスピードでカチカチッとやらない!
凄いスピードでやると正しいトルクは掛かりません。大体は規定トルクより高めに掛かる場合が考えられます。特にタイヤホイルで注意が必要です。必ず、ゆっくりとカチッと音を確認してください。
2.ラチェット部を正しく直角に保持する事。
これが結構難しいので充分注意してください。(
=殆どの作業者が多かれ少なかれ起こしているミスです。メカニックによってトルクが異なる場合にはまずこの部分を疑ってみましょう!少しでも直角がずれるとそこで余計な摩擦が発生して正しいトルクにはなりません。過去にオーナーがトルクレンチを使用して掛けたトルクが後で調べてみると2キロ以上ずれていた事があります。
 直角の保持はかなり経験が必要です。なかなか拾得出来ないと考えておいてください。充分拾得出来るまでは、ラチェット部に余計な力が掛かっていないかどうかを常にチェックする癖を付けて作業してください。
3.いきなり、本締め込みを行わない。
これも当然基本中の基本ですが、ある程度慣れてきたメカニック程陥るミスです。本来、複数のボルトで締め込むパーツは対角線上に少しずつ締め込んで行くのが基本ですが、例え1本で締め付けるパーツであっても少しずつ締め込んで行きます。特に古くなって少なからずダメージがボルトに掛かっていると予想される場合(
=もちろん新品にするのが原則ですが・・や、足廻りの重要部分では細かいステップでトルクを少しずつ上げていき規定トルクにもっていきます。(=場合によっては最低刻みの0.1キロや0.05キロステップで締め付ける事もあります。
4.エクステンションバーやユニバーサルジョイントを使用したトルクの掛け方を拾得する。
これは、充分慣れてから(
=トルクレンチを必ず使用するメカニックとして、最低1年の経験を積んでから)の話になります。いきなり行なうのは全く理解出来ていないメカニックです。
 と言うのもこの方法は基本的に絶対にやってはいけないやり方です。常識のあるメカニックからは必ずどやされる筈です。(=実際、前にショップのチーフメカニックからしつこく注意を受けましたが・・)
色々な作業を進めて行けば出くわす事になりますが、重要な部分程トルクレンチなど入りません。その時でも必ずトルクレンチが必要になります。
 そう言う場面では、ユニバーサルジョイントもエクステンションもそれぞれの“
工具独自のトルク誤差”を充分に調べておけばどんな場所でもトルクレンチでの確認ができます。(=ユニバーサルジョイントは、内部にバリなどが無い高価な物を選択し、4面ある1つを選び、角度をそれぞれ決めて誤差を策定しておきます。また、ユニバーサル部分にはオイルを塗布しておいてください。
=逆に言えば、どんなボルトでもトルクチェックが必要と考えてください。「
俺は、経験の深いメカニックだからトルクレンチは要らない!」と裏打ちのない自信を持っている人程、必要です。
※レーシングアートでは、全てのねじの85%以上をトルクレンチを使用しています。残り15%でも自分の体調が優れない時は必ずトルクレンチを使用するか?その日は作業を行わない事すらあります。
5.トルクレンチは、安物を買わない。
これも、当たり前の事ですが、トルクレンチは精密部品です。安物では数値がかけ離れている事も多く存在します。出来ればスナップオン工具を選択してください。また、最低でも1年に一回はメーカーでの点検を受けてトルクチェックを依頼してください。信用出来ないトルクレンチを使用するのは何もしないより最悪です。

 とにかく、練習してください。どんなボルトでもトルクレンチを使用してみましょう。特にメカニックとして仕事でクルマをいじる訳ではないサンデーメカニック?の方は、誰も文句を言いませんから、何でもかんでもトルクレンチを使用しましょう。
 慣れる事が一番の上達方法です。また、暫く時間が空いてしまった場合は重要パーツを締め付ける時は最低3日は練習の日を設けてください。それ程重要です。
※練習する機会が多ければ多いだけ、新しい発見があるはずです。ボルトの製造誤差も見つかります。表示のトルクを掛けると折れてしまう粗悪なボルトが如何に多いかも解ります。また、古いねじ山では正規トルクを掛ける事すら困難な事も理解出来ます。正しく締め付けるためにはきちんとねじを修正する必要も出てきます。時にはねじ穴にオイルを注入して締める必要も出てくるかも知れません。それらの経験は必ずあなたの身に付き、将来貴重な財産になる筈です。
そして、作業の基本は、ねじをきちんと締め付ける事だと改めて気が付くはずです。

 レーシングアートのホームページで、プラグ交換をしただけで燃費が上がると言うのは、決して嘘ではありません。正しいトルクをきちんと掛ける事でアースとしてのプラグのねじ山がエンジンにきちんと接地する事で、正しい火花が飛ぶから燃費が上がる。これは当たり前の事で、何も魔法ではありません。(=物事は、理論的に考えれば自ずと答えが出てきます。特に機械に関しては、なるようにしかならない筈です。もし、理論通りにならないのはやり方が悪い事が一番多い物です。
 逆に、新品プラグを付けた時に燃費が上がらない理由の第一位はプラグのトルク不足です。(
=限界を超えたきちんと着火出来無いプラグから、新品プラグに交換したら必ず燃費が上がるはずです。そうならないのは理論的におかしい事になります。

 新規正規会員をなかなか募集出来ない状況の今、自分できちんとやるしか方法が残っていないのであれば、その努力をするしかないと思われます。
 
とにかく、頑張ってみてくださいね!