タイラップを使用したホース抜け止め(=タイラップの欠点を知らない!)

 タイラップでの締付け作業は非常に便利です。しかし、便利な物には必ず大きな欠点があり、その欠点を補う方法を熟知し、向かない部分には使用しないという決断が必要になります。
 その欠点すら知らずに、その補い方すら知らずに作業してしまうのが恐ろしい事です。

1.タイラップの締め付けは真円にならない!
 本来、タイラップには使用範囲があります。何故なら、あまりに小さい径になると真円として締め付けられないと言う欠点があります。
 かといって、締め付け過ぎると矢印の部分に隙間が出来てしまいます。「
ほんの少しの隙間だから気にし過ぎだよ!」と感じる人は、もう一度よく考えてください。
 元々4φホースからのエア漏れなんて気にしていましたか?ほんの少しの漏れが集まると大きな漏れやブースト圧不安定を引き起こすのです。
 この事を無視する人には、バキュームホース対策など行なう価値はありませんよね・・

2.タイラップの締め付けにはかなりの“コツ”が要る!
 タイラップを締め付ける時には、図のようにタイラップの根本にマイナスドライバーなどを当てがって、その位置を決して動かさないようにして丁寧に締め付ける必要があります。
 比較的大きな径でなおかつ、その元のパイプが丈夫な物(=金属製)であれば、問題はありませんが、単純に引っ張るだけだと相手方のプラスチックパイプ類が破損します。
 特にバキュームホース対策を行なう場合、大体の相手方は、3ウェイバルブなどのプラスチックパイプになります。まして、異常な熱の掛かったエンジンルームであれば、ちょっと無理な力が掛かると、簡単に根本から折れてしまいます。
 どこかのショップにバキュームホース対策を頼んだら、
バルブ類を新品にする必要があったので、請求金額が上がった。と言う事がもしあれば・・もしかすると、作業者の強引な力と経験不足が要因かもしれませんね。
※因みに、レーシングアートで一番ひどいクルマでも11個あるバルブの内
4個が破損したのが最大です。通常は、あっても1個です。特に40万台以降では、バルブ自体の内部抵抗がおかしい物(今まで一台だけありました。)があってもバルブの根本が折れることは一度もありませんでした。(=ただし、異常な熱が掛かり続けたクルマは別です。)

3.タイラップの材質
 これをあげるのは問題外なのですが・・
 タイラップの品質は“
ピンキリ”です。特に耐熱性耐候性は目で見て解るものではありません。充分なテストが必要です。
 でも、
テストなんて簡単です。タービン上に位置するアクセルワイヤーに軽くタイラップを装着して、一年間充分な柔軟性を保てば一応合格です。
 品質の悪いタイラップは多分数日、数週間で硬く変化して少し捻ると簡単に割れてバラバラになります。
 嘆かわしい事に、このような目で見て判断の効かないパーツはドンドン悪く、安くなっています。経営難のショップや儲け主義のショップでは、一本数銭(=一円以下)のタイラップを使用しています。
 気になる人はすぐにテストしてみてください。

 タイラップに関わらず、全ての使用パーツは充分なテストが必要です。
 クルマは、例えば屋内使用に限定された電化品などと違い、異常な振動、異常な高温、異常な紫外線、異常な電気的ノイズ、オイルや異常なケミカル品などに耐えられなければなりません。
 単純に安いからと選択してしまうメカニックは問題外です。それはクルマの条件が如何に厳しいかを理解出来ていない証拠になります。

 作業を依頼する前に、一言聞いてみましょう!
使用するパーツの選択基準は何ですか?』『どんなテストを行なっていますか?』と・・きちんとしたショップなら当然選択基準は決まっていてテスト内容、項目も決まっているはずです。その項目がないショップは端からきちんとしようとは考えていないとまで言えます。

4.ついでに・・
 タイラップの使用方法の基本として、切断位置を5〜10ミリ残してカットする(=自分で取り付けたり他のショップで作業した場合ほぼ100%の確率で余裕を残してカットしてあります。)と言うのを聞いた事があるかもしれません。これは、万一ロックが外れても余裕があれば、タイラップ自体が外れてしまわないとの基本使用方法ですが・・
 レーシングアート基準合格品では、1山もロックが緩まない事が最低条件です。そのため、残っているタイラップのせいで作業性が落ちるのを防ぐため全く余裕を持たせず、面一でカットします。そして、現在使用している合格品で今までこの処理で緩んだ事はまずありません。

 使用パーツを厳選するとはこういう事になります。