サーモスタットカバーのパイプ部

 2003年春頃からの新品部品でかなりの頻度で発生してくるようのなった不具合です。(=厳密にはスが入っている可能性は、2002年5月以降の新車及び、新品パーツ交換を行なったクルマです。)
 サーモスタットカバーのパイプ部に微少なスが入っている物が出始めました。
 厄介な事に微少なスは、新品では肉眼で確認する事は不可能です。
 確認するには、最低でも3ヶ月くらい装着してみるしかありません。

 今のところ、発生頻度は低めです。しかし、装着前に確認する方法がないので、ある程度博打できな要素が残ります。
 そのため、レーシングアートの場合では、ホースバンドを2重に掛ける事で解決しています。この方法が抜本的な解決にならないのは解っていますが、この部分以外にオーバーヒートの原因が無いところまで修理しておけば、この対策で完全に解決出来ます。

アッパー側のウォーターホースを外した時に、左画のように粉を吹いたようになっていれば、既にアウト!と考えてください。

上の粉々を綺麗に除去するとスが見えてきます。
矢印の所が一番大きなスでした。これは、修正不能だし、このまま新品のホースを交換したとしても当然漏れてきます。
しかし・・残念ながらこのまま戻すショップも多いと思われます。サーもカバー交換は更に面倒な作業が待っているので、この状態は見なかった事にして?このまま新品ホースをギュウギュウ締め付けてしまいます。

スの知識

何故このような状態になってしまうのか?皆さんにはにわかには理解しにくいかもしれません。
大抵のこのようなパーツはアルミの鋳造品で出来ています。鋳造は、通常純アルミとゴミアルミを混ぜて溶かした物を使用します。“キューポラの見える街”でしたか?吉永小百合が主演の映画で埼玉県川口市の様子が描かれていると言う事です。(=私はこの映画をまともに見た事がないので、かなりあやふやです。)川口市は今ではかなり小綺麗な街に変身していますが、少し前まで角を曲がると必ずと言って良い程煙突が立っていました。あちこちに鋳物工場があって、鉄の焦げた臭いが充満していました。
前の会社で下請けに頼んでいたインテークパイプを引き取りに行ったところ、「まだ出来ていないから直接工場に取りに行きましょう!」と言われ、一緒にとても小規模な鋳物工場に行きました。
想像とは異なり(=もっと近代的な工場を想像していました。)本で読んだ通り、まさに砂を使用して型を作り、その型を2m×4mの砂場に置いて、その中に溶けたアルミをひしゃくで流し込んで行きます。ものの数分すると周りの砂を壊して固まったインテークパイプを取り出します。取り出したら、すぐにサンダーでバリを取り成形していきます。あっという間に出来上がり・・・?でした。

溶かすアルミの中には、アルミ缶なども投げ込まれていました。プラスチックのコーティングは取らないの?と言う暇もありませんでした。型に使用する砂にも鉄や他の金属の破片がごろごろしています。
全てに工場がこの状態ではないにしても似たり寄ったりでしょう。
つまり、ここでは通常の鋳造アルミには不純物が多く含まれたアルミになる事を理解してください。(→因みに、鍛造は、まだ固まる前に大きな圧を瞬間的に掛ける事で中の不純物を外側へ叩き出す効果もあります。もちろん、アルミ自体を純度の高い物にするのは当然ですが・・)
例えば、メーカーによって鋳造アルミの内部状態は大幅に異なります。スカスカの物から、しっかり中が詰まっている物までさまざまです。2002年以前までFD3Sのサーモカバーはスが入る事は殆どありませんでした。ところが、最近では、かなりの頻度でスが入ります。
ただ、このスが入るかどうかは先によ〜く観察しても目では確認出来ません。(=メーカーではやろうと思えば出来ると言う話です・・)
そのため、レーシングアートでは、表面をバフ掛けに近い状態まで磨き上げてから、新品ホースを使用して、その上から2重ホースバンド掛けを行なっています。この対策で殆ど問題はありませんが、もし、他に漏れている部分が残っていれば、当然の事ながらこんな処理で止まるはずもなく、みごとに漏れてきます。そしてその漏れは初回の漏れより更に程度が高くなり、本来漏れていた箇所以外の部分でも発生します。

常々、『いい加減にやるのならやらない方が良い!』と話しているのはこういう結果を招くからです。本当の真似なら大歓迎ですが、猿真似は非常に危険です。
少々の漏れなら気にせずそのまま我慢して乗りましょう。
どこかの猿真似ショップで余計な事を行なうと取り返しの付かない事になります。冷却水関連の修理でもその方法を誤ると、最悪、エンジンを破壊してしまう事も充分考えられます。