オイル交換で解ること。
・・過去に私は、多くのユーザーに「オイル交換は、自分でやれ!」と言っていました。『エンジンオイル交換などの”軽い”作業くらいを自分で出来なければ、チューニングカーに乗る資格などない!』という考えでした。
ところが、エンジンオイルの分析を行なうようになって来た現在では、エンジンオイルはダメな物の方が圧倒的に多く細かいチェックは、素人では出来そうもないと判断せざるを得ませんでした。
また、エンジンオイルの劣化を適格に判断するのはまず難しいのが実情です。
これらの結論から、現在では自分のクルマを大切にしたい人には、オイル交換ですら、レーシングアートで行なうように薦めるようになりました。
正直に言うと、本当は非常に面倒臭い作業で、工賃も多くとれる物ではないので、『やりたくない!!』と思っています。しかし、やらなくてはいけない重要な作業の一つなのです。・・・
実際の作業:
1.ユーザーがレーシングアートに到着した時のエンジンの温度がまず基準になります。大体こちらの基準データに近い温度まで下げます。(=正確には、温度が下がるのを待ちます。)
ごく希にユーザーに時間が無い場合には、通常より高い温度で行なうこともありますが、交換前のオイルが特にデータのないオイルを使用している場合には、目指す温度まで必ず、待ちます。
2.温度が下がったら、まず、ドレンを外した直後のオイルの温度、粘度、透明度(=LEDライトを使用してチンダル現象で判別出来る金属粉がないかどうか?)、ザラツキ、臭い、他にカーボンの焼け臭なども重要です。)などをチェックします。
※前回交換時にレーシングアートで指定した交換時期を少しでも過ぎるとオイルは間違いなく劣化していると考えてください。そのオーバーした距離で傷み具合が異なります。チンダル現象で見える細かい金属粉で少量であれば、まずエンジンの傷みは無いと考えても構いませんが、目視で確認出来る大きさの金属片が一個でも混ざって居る場合にはエンジン内部を傷付けていると考えてください。
※因みに、エンジンオイルパンのドレンボルトに磁石を装着した物を使用している人を時々見掛けますが・・磁石にくっつくくらいの金属片が出てきていたら、はっきり言ってそのエンジンは終わってます。(=かなりの重傷です。早めに手を打たないと本当にお釈迦になってもおかしくありません。)
3.抜き始めて、約1分後の状態をチェックします。この時は、主に”流れ具合”をチェックしています。変な場合には、粘度、透明度、ザラツキをチェックします。
※粘度点検が重要なのは、チンダル現象でも発見できないほどの細かい金属粉が発生し始めて、エンジン内部に悪影響を及ぼす要素がないか?事前にチェックする目的が第一位です。
※正常なオイルでは、新油と3,000km走行後の粘度変化はまずありません。しかし、新油より粘度が低下している場合、クルマに異常がなければオイルのメーカー及び銘柄を変える必要があります。また、粘度が上がってドロドロに近い物は、金属片がかなり混じっている筈でそのオイルを使用していればエンジン自体の寿命を著しく縮めると考えた方が自然です。
※レーシングアートでメンテナンスを行なっているオーナーでは、オイル粘度の変化はかなり重要です、指定オイルを使用してきちんとメンテナンスを行なう場合、粘度変化はイコールトラブル発生と考えて間違いありません。オーバーヒートや電気系統のトラブルなどオイル交換時のオイルを細かく観察する事でトラブルが大きくなる前に対処する事が可能になります。
4.2〜3分後、粘度、透明度をチェックします。
5.最後に、オイルの”キレ”をチェックします。”ツー”から”ポタポタ”になり、完全にキレが出るまでの時間をチェックします。
※
6.ユーザーが怪し気な添加剤や、レーシングアートで使用禁止(!)指定オイルを使用している場合には、オイルフィラーキャップの裏をチェックします。白いブヨブヨが発生している場合には、今後一切の使用を禁止し、危険性を充分理解して貰います。
私が行なっているこの一連のチェックは、多分、注意して私の行動を観察していないと解らないはずです。
初めて、レーシングアートでオイル交換したクルマの場合には、特に細かくチェックしています。
レーシングアートでお薦めしているオイルを3回以上続けて使用している場合には、もっと手を抜いた(?)チェックになりますが、チェックを怠ることはまずありません。
というのは、前回のオイル交換から、今回までに何か”異常”が発生していることも考えられるからです。
具体的なチェックポイントのそれぞれの意味・・
粘度:必要な粘度を維持できているか?判断します。→明らかな粘度低下は間違いなく、大きなトラブルとしてエンジン内部のメタル部分を傷付けます。それ以外にも数多くのトラブルの診断に役立ちます。
透明度:目に見えない程細かい粒子を判断しています。→油膜切れの有無や洗浄作用が正常な状態か判断します。チンダル現象を利用する事で更にはっきりとした診断が可能です。油膜切れは例え、微少な物でも悪影響は大きく出てきます。
ザラツキ:比較的大きな粒子をチェックしています。→ザラツキがあれば、そのオイルは、決して使用してはいけません。通常、液体において不純物が混ざると粘度は高くなります。粘度変化をもたらす程のザラツキは非常に危険です。
臭い:特にガソリン臭を嗅ぎ分けます。また、オイルの変質が無いかもチェックしています。→ロータリーエンジンでは、プラグがカブリ気味になるとエンジンオイル内にガソリンが混入してきます。そういう状況は非常にまずく、油膜切れを起こし易くなります。また、僅かなガソリン混入に依り変質が発生しているオイルでは、それ以降使用できません。(=ロータリーエンジンだけでなく、メンテナンスの悪いレシプロエンジンでも微少なガソリンが混入してくるのは日常茶飯事に近い現象です。その状況に対応出来ないオイルでは、使用していても仕方ありません。)
たかが、『オイル交換』ですが、これだけの事をチェックできるのです。ボーと見ていれば何も解りませんが、毎回細かくチェックしていればオイルは多くの事を語ってくれます。
もちろん、エンジンをバラシた時に、エンジン各部を細かくチェックしているからこそ、これだけのことが言えるのですが・・・