ラジエター本体交換
ノーマルラジエター本体から冷却水が漏れている場合、発見はかなり困難です。
かなりの経験を持つ優良ディーラーメカニックでも困難だと思われます。事実、このページの例になっている製品を見せても「えっ?どこですか?」と言われ、「これは、埃とかが溜まった痕です!」と断言したそうですから・・・
ノーマルラジエターは20年以上前から現在のプラスチック製サブタンクを使用した製品に変わりました。それまでノーマルでも真鍮製のラジエターを採用していましたが、その後全ての車種で現在のタイプを採用しています。このタイプはそれまでの理論をもう一度見直して、(良い所だけ並べると→)なるべく薄く=軽くして冷却効果を上げています。実際、通常の一般道路の走行ではノーマルタイプが圧倒的に優れています。今ではトラックでさえこのタイプを採用しています。
しかし、難点は、カシメによる接合部です。開発当初はここからの漏れは殆ど発見出来ませんでした。ところが・・このご時世・・ここでも手抜きが出てきたのでしょうか?ある程度の“異常な?”圧が掛かるとそれ以降、じわじわ漏れてきます。漏れと言うよりは、“滲み”と言った方が正確かも知れません。
また、その漏れ方も症状の出方も非常に特殊です。かなり経験を積んだと考えているレーシングアートでも、未だに正確な判断をするにはかなりの時間と観察を要します。(=ラジエターを外して点検出来れば、すぐに判断出来ますが・・それだけで工賃が発生しますから。→観察したい箇所は装着状態ではカバー)とかに邪魔されて見えません。)
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金色のペイントでマークした部分から漏れています。サブタンク側に白いクーラントの乾燥した痕が発生しています。 |
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カシメ部を真上から観察するともっとはっきりします。 ペイント部は上の画よりはっきりと白い粉が見えてきます。 |
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この部分では中央のペイント部2箇所がひどくその右隣に流れて行っているのが解ります。 この部分の元凶は中央21箇所のペイントの中心部分が臭いように見えます。 |
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この部分は全く問題が無いと思われる部分の画です。 カシメ縁の白い部分は、多分、埃がくっついて出来た痕でしょう。この変化と上の画の変化は明らかに異なります。 よ〜く観察すれば見えてくるはずですが・・・ |
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全体図です。(=合計4辺ある内の一つ) このペイントしている状態でディーラーに持ち込んだにも関わらず・・それでもこれは埃の痕だと認めなかったそうです。・・残念な事です! |
あまり、当てにはならないかもしれませんが・・
一応、ノーマルラジエターから冷却水の漏れが発生している時の典型的な症状です。もちろん、他の漏れを全て完璧に止めてからの判断になります。
1.エンジン側キャップはあまり減らない。
2.エアセパレーターキャップ側が少し減る。
3.3〜4回は減らず、5回目に突然減る。のパターンを繰り返す。
4.スポーツ走行しても、直後のチェックではあまり減らないが、その後2回目くらいのチェックでは「ええっ!!」と言うくらい減る。
5.エンジン側は手で触れるくらいなのに、ラジエター側は手では触れないくらい熱い。
6.走行後、深夜の住宅街など全く騒音のない場所に止め、エンジンを切ってから2〜3分後ラジエターの下側周辺から、ピ〜ィ・・・と微かな音が発生し、長くても2分は続かずに消える。
7.その異音の発生した2回目のチェックでは、両キャップは驚くほど減ってしまう。
あまり当てにならないと言うのは、今まで症状だけで、ラジエター交換をした事はありません。あくまでも、他に漏れが100%無い事と、充分な観察が必要です。
もし、その条件を満たさないのに、ラジエターを交換したとしてもまたすぐに同じようにラジエターから漏れてくるのは当然の結果です。そして一旦漏れ始めたラジエターはもう一度新品にしないと漏れ続けます。(=一度、“漏れる道筋”が出来るとその道筋に乾いたクーラントがくっつき、隙間を作ってしまいます。そして、その隙間は漏れる度に広がっていきます。)
ノーマルで何も異常が無ければ、漏れない筈のノーマルラジエターです。(=本来、そういう設計をしている筈ですから・・)漏れている原因を突き止めて修理していないのに、新品ラジエターに交換しても全く意味のない修理になります。
※100%の漏れがないと言う判断は非常に難しい場合が殆どです。全ての怪しい部分を調べて完璧な修理して行きます。その過程で、先に修理した部分からの再度の漏れが生じる事もあります。しかし、それは修理した段階で完璧に修理した所であって、その時点以後の新たなトラブルが発生していると考えます。その新たに大きくなってきた原因箇所を突き止めます。それらの結論が出て、最終段階になって、ラジエター本体の交換になります。
また、観察とは、完全暖気後15分走行→5分休憩→15分走行→・・・を繰り返して、一番条件を悪くした状態での冷却水の変化を調べます。更に、夜間充分な冷却をもうけてチェックします。更に、2〜3日放置して暖気後低回転から高回転まで一気にエンジンを回します。この後、15分走行→5分休憩→を繰り返します。
観察と言っても、気の遠くなるようなチェックを行ないます。
当然、預かりの期間は延びます。
たかが、ラジエター交換と考えないでください。そこまでの決断は多くの時間と手間を生じる物です。
ただし・・・駄目な後付けラジエターでの判断は早い事があります。レーシングアートでは、既にデータ上でどこが弱くてどこから漏れるのか?解っている場合が多く、そこを確認したら、その漏れ部分がどの範囲までの冷却系統を駄目にしているかを判断して、一遍に全てを抑えます。ただ、エンジンまで駄目にしている場合を除いて・・・