ヘッドライトハーネスの潰れと端子の広がり(60万台後半とヘッドライトバルブ交換を行なったクルマ

 ヘッドライトの配線に何かあったとしても、気にする人は殆ど居ないはずです。しかし、現在まで15台近くの対策及び、修理を行なって、全てのクルマでエンジンのトルクアップを確認し、オーナーも体感済みです。
 本当の理由は解りませんが・・
想像すると、ヘッドライトのハーネスには大電流が流れているため、電気の流れに少しでも悪影響を及ぼすと全体に流れる電圧を下げてしまうだろうと容易に推測できます。また、納車直後の新車でもバッテリーの端子をきちんと付け直す(=端子の全面が100%密着するようにします。)だけでエンジンの調子は見違えるように良好に成る事は既に経験済みです。
 多分、大電流を必要とする配線はほんの少しのダメージでも、エンジン制御に大きな影響を及ぼすのだろうと考えています。

 ただし、私が心配しているのは実はその後の悪影響です。FD40万台以降、ヘッドライトの配線は一番電気を研究していると思われるT車の高級車(=100%子会社に世界一に近いECU開発能力を持った会社があるのが理由です。)より2ランク上の物を採用しています。(=銅線はかなりコストに響きやすい事から、常にギリギリに設計されるのが当たり前ですが、何故かロータリー車はコスト無視?)
 しかし、逆に言うと、ロータリー車開発担当者はかなり電気の事を最重要に考えていたのかもしれません。それでも、やはりギリギリです。ギリギリの設計と言う事は、つまり・・少しでもダメージがあると必ず、
異常な熱を発生する事で、その関連する配線全てを駄目にしてしまう事が考えられます。

 最終的に・・フロントハーネスを新品交換するしか選択肢が残されない状況に陥るのは時間の問題であり、それを修理できる(=緻密で面倒な仕事を他でやらない!)のは今のところレーシングアートしか無く→その修理をやるしかない!事になるのが“”なのです??

 余計な話、電気系統の修理はもの凄く体力と精神力を消耗します。作業中には殆ど息をしていません。少しでも気を抜くと必ず見落としが出てくるからです。もし、一箇所でもダメージのある部分を見逃すと、99.9%完璧に作業してただの一箇所を見逃しただけで、結果は30%以下になってしまうからです。ハーネスの新品交換はまだ楽な部類に入るのですが、カプラーの抜き差しには細心の注意が必要になります。特に、フロントハーネスはバッテリー電源を一番最初に流す部分でもあるからです。

 そして・・最悪の結末を考えた場合、車両火災を引き起こしかねないのです。少なくともレーシングアートの会員に車両火災で命を落とす人を出したくないのです。
 それでも、オーナーにその危険性を必要以上に強調する事はまずありません。本当の危険はその場面に向き合って初めて理解出来るものです。ある程度説明しても理解出来ない人は、そう言う経験をするべきだと私は考えています。体験する事が一番身に凍みますからね??

 あくまでも、自分の身は自分で守るのが基本中の基本ですから・・・

60万台4,000番台以降のカプラーとハーネスの関係です。

矢印のある2カ所でハーネスを押しつけています。元々左のヘッドライトのハーネスはカプラーギリギリに通してあります。初めてこのハーネスを通す人は殆どミスすると言っても過言ではありません。
私も初めて外して、再度付ける時、あれっ??と困惑しました。一体どこを通せば良いの?って・・・
しかし、50万台以前ではこの部分の接触はまず100%あり得ません。うまく逃がして接触部分は全くありませんでした。

上のクルマで、ハーネスを少しずらしてみます。
カプラーが押し付けられていた部分が見えてきます。長期間、強い圧で押さえられ、また振動も拍車を掛けてしまったと考えられます。
黄色のテープ部分の潰れはすぐ確認出来ますが、その下のコルゲートチューブ部分にも潰れが発生しています。広範囲の修理が予想されます。

ハーネスの一部を剥いた画です。
上の画で見えているのは、第一層=黄色の塩化ビニールテープ、第二層=コルゲートチューブまでです。その下に第三層=黒の塩化ビニールテープがあるのですが、これらを取り除くと、配線に
コルゲートチューブの凸凹がしっかり刻印(?)されてしまっています。

証拠が残っているこの部分を中心に指先で傷んでいる範囲を調べます。
その後、傷んでいる部分の更にその外側5センチくらいまでを取り除き、新たな配線を繋ぎ直します。
(=癌細胞が周りの組織にどこまで浸潤しているか?を知り、完全に削除する外科手術みたいですか??)

同じクルマで、ヘッドライトハーネスのもっと根本の部分にもトラブルが見つかりました。

上と同様に傷付いた部分です。
上のように明らかに解る部分は希です。
視覚だけに頼ると、左の画のようにかなり注意深く観察しないと見落とす事が多々あります。

あくまでも、大切なのは指先の感覚です。

また、別のクルマです。

これは、上のクルマとは違うパターンで当たっています。
この場合では、当たっているかどうか?さえも見落とす事があり得ます。

確認には、一度カプラーを外す事が肝心です。

※しかし、もし皆さん自身が確認するのは充分な注意が必要です。最低握力の問題や重要カプラーの脱着の重要性を充分理解している人でもミスする可能性は非常に高いのです。
決して安易に考えないでください。「たかが・・ヘッドライトでしょ!」と考えるなら、逆に触らないでください。

第一層〜第三層を外す前に、傷付いた部分をよく記憶しておいてください。
一旦、外し始めるとどこがどこだったか?解りにくくなります。
カプラー端からの距離をメモしておくなどの事を忘れないでください。

安易に考える人は、決して触るな!!の訳です。

この画の端子がひどく曲がっているのは、誰の目にも明らかでしょう。これをやってしまったのは、ディーラーのメカニックです。それも結構真面目な営業所のです。(=結果的に、他の作業はまあまあの気遣いですが、こと、電気には無頓着だったようですが・・)
※もし、この状態にしてしまうと、まずフロントハーネス交換を覚悟する必要が出てきます。ヘッドライトハーネスには大電流が流れているので、微少な接触不良でもドンドン浸食されていき、平行して走る全ての線を駄目にしてしまうからです。
※また、端子は真鍮(=銅の合金)の内でも銅の含有量が非常に高い物を使用しているようです。そのため柔らかい!うっかりこじると間違いなく端子は広がります。イコール→接触不良です。
また、端子の配置は3個が直角に交わる配置のためどの方向にこじってもどこかに悪影響が生まれる事になります。

レーシングアートでは、カプラーから一旦端子を引き抜いて修正を掛けます。

重要な修正ポイントは、矢印の距離です。狭過ぎても広過ぎても駄目です。
また、接触面に1000番のペーパーヤスリを軽く掛けます。表面のザラザラを取って接触面をなるべく広くするようにします。
※端子をカプラーから外すのは、素人と電気修理を行なった事のないメカニックはやめてください。少なくとも、重要なカプラーは2重ロックになっている事とその重要度を充分理解している人でなければ、必ず痛い目に遭うと考えてください。

※電気系統の猿真似は決して行わないでください!
電気系統、冷却水修理は、充分な知識と経験が無ければ、非常に危険です。まして安易に考えて、全ての注意書きを読まないような人には初めから無理です。
そして、いい加減な作業は、必ず、100%の確率で最悪の結果へと繋がっていきます。
例えば、一番の最悪のフロントハーネス交換は、レーシングアートではあと数年は行なえません。また、もっと悲惨な結果はこの作業だけでエンジン破損まで繋がる事も希ではありません。
※この記述で、気が付く人もいるかもしれませんね。“自分のクルマはどこも異常が無いはずなのに、エンジンが原因不明で壊れた!”・・本当に原因不明(=通常のエンジン破損は、比較的簡単に必ず原因が見つかります。それを見つけられないなら、ちゃんとしたショップとは言えないでしょうが・・それ以外の原因不明の破損と言う意味です。)のエンジン破損は多分電気系統だと当てずっぽに言ってもあまり外れないと思いますよ!