フロントハーネス関連 1.アース不良の修理

 フロントハーネスの部分的な接続箇所の内、一番重要な部分がアースポイントになります。
 FC3Sでは、アースポイントは各セクション毎にそれぞれ別個に設置されていました。その数も半端な数ではありませんでした。ところが、FD3Sになってフロントハーネスのアースポイントは殆どを集約させる方法をとっています。
 フロントバンパー内に2点アースポイントがありますが、ここは充分なトルクと最新の注意を払って取付を行わないととんでもない事になってしまいます。

 40万台前半までのFD3Sでは新車から、何も作業を行なっていなければ殆ど心配は要りませんが・・40万台後半からは心配な部分です。
 今回のクルマは多分新車時にバンパーを外してアースポイントを一度緩める作業を誰かが行なったと考えています。その時アースポイントを戻す時にその重要性をしっかり理解していなかった事が今回の問題を生んだと考えられます。しかし、レーシングアートでは50万台、60万台と進むにつれて新車で接触不良を起こしているのはほぼ間違いないと考えています。現時点で、その接触不良がどの程度のレベルなのか?不明ですが、将来的にこの部分の修理も加速度的に増加するのは間違いないと覚悟を決めています。
 更に、HID取付などを行なうとアースポイントを外す可能性もあり、余計な(?)作業を行なった人は将来ひどい目に遭うのは今から覚悟しておいた方が良いと思います。
ただし・・・
接触不良の程度がひどく、駄目作業から充分な時間が経過してしまった場合には、フロントハーネスの新品交換が必要になる事が多いので、注意してください。
※フロントハーネス交換は、現状では3年程待って貰っても無理かもしれません。また、今回説明するアースの復活対策も基本的にいきなり作業する事はまずあり得ません。他の部分をきちんと修理してからでないと何の意味ももちませんし、先に新品交換を行なうともう一度やり直す羽目になりますから、安易な修理は厳禁です。

フロントハーネスのアースを修理する場合は、当然の事ながらバンパーを脱着する必要があります。

脱着のみでも工賃が発生するので、気軽に点検出来ないのが現実です。
本当にアースが不良である!と結論が出ないとなかなか踏み切れません。しかし、今までの経験からほぼ100%に近い確率でアース不良を断定出来る場合が多いので、『アース不良が考えられます!』と言う時は覚悟を決めて貰った方が良いと思われます。
※フロントバンパーを外す場合、取付用の埋め込みボルトでフェンダーに傷を付ける危険があります。画のようにガムテープで保護する場合が多いのですが、そのまま貼ってしまうと反って塗装を駄目にする事もあるので、単純にガムテープを貼る事はありません。なお、今回の場合、ガムテープの下層に特殊なテープを使用しています。
単純な作業はあり得ません。例えどんな作業でも何らかの工夫をしながら作業を行なう例でもあります。

バンパーを外すと言う事は・・・

当然ですが、インナーフェンダーを初め、ヘッドライトや周りのパーツも数多く脱着する事を意味します。
一般のオーナーはなかなかその作業の実体を把握する事は出来ませんが・・・やる事をきちんとやって、クルマが要はきちんと治れば良い訳です。

アースポイントの構造

重要なアースを5本まとめてボディアースしてあります。
このアースが左右2箇所あります。
一見しただけでは、何の問題もないように見えます。

もう片方も一見しただけでは、特に問題が無いと思うかもしれませんが・・・

よく観察すると、ボルトとアース部分の隙間に錆が発生しています。
電気の事が少し理解出来るなら、ここに錆があっては問題外だとすぐに理解出来るはずですが、実体は殆どのメカニックが見逃してしまう部分です。

ホーンのアース部分です。

殆どの車両で、ホーンはプラス側のみの結線になっていて、アースはボディアースになっています。
この部分も対策修理が必要になります。
もし、ここを軽んじてしまうと後でホーンが鳴らなくなります。
実際、このクルマでは片方が鳴らなくなってしまっていました。このクルマの場合では、ホーンのアース不良が直接の原因ではなく、フロントハーネスのアースが不良だった事が原因と考えられます。
※ホーンのアースは重要です。特にFC、FDでは重要になります。ただし、ホーンを鳴りっぱなしにする人は居ませんから、すぐに大きな問題が見えてくる訳ではありません。「何か?変だな〜??」と感じたら、既に相当問題は大きくなっていると考えてください。また、片方が鳴らなくなったら、すぐに対策修理を施すか、クルマの使用をやめておいた方が安全です。

もう片方のホーンの取付部です。

こちらもよく観察すれば錆が発生しているのが見えるはずです。

そのアースを外して裏側を見ると・・・

錆の範囲は大きく広がっているのが見えます。
※ボディ側の観察が特に重要なポイントになります。ボルトの近くまで細かい砂埃が入り込んでいる事から、締め付けトルクが不足していたのは明らかです。

フロントハーネスのアース部分を外した画です。

こちらも砂埃が入り込んでいます。実際、締め付けトルクはかなり低く、規定値を下回る物でした。

フロントハーネスのアースポイント裏側に錆が発生しています。

今回最大の問題点です。
※今回の場合、誰かがアースポイントを一度外したと考えています。この部分に黒い塗装がくっついていますが、通常のラインから出てきた新車ではこのような事は殆ど起こりません。充分に塗装が乾燥してから締め付けるからです。
しかし、今回このように塗装がくっついていると言う事は誰かが外して一度塗装を施し、完全に乾燥しない内に再度締め付けたと考えるのが自然です。
ただし、このクルマは40万台後半です。もしかしたら、メーカーのライン上でも乾ききらない内の作業もあり得ます。可能性は低いのですが・・・

ホーンの取付が2枚の金属を使用している場合があります。

年式や左右のホーンで取付方が異なります。
この2枚の金属を使用した取付部は更に注意が必要になります。
全てのパーツをばらして、それぞれの接触部の錆を落とすなどの作業が必要になります。

画では解り難いのですが・・

一度、通常の対策修理を行なって取り付けました。ボルトの頭の錆は特に気にしなくて構いません。
ただし・・・今回の場合は一度取り付けてから気が付いた事がありました。

通常、アース部品をばらす事はあまりありません。

しかし、今回はアース類を取り付けて、ホーンを鳴らしてみると100%の音色が出ていませんでした。
きちんと従来の対策を行なったのに・・・何故!
と言う事で、アース部分をばらしてみました。
5本のアース端子のオス側がかなり腐食している事が判明しました。
※5本の突起部分がまだら模様になっているのが解ります。当初の想像以上に腐食が進んでいたようです。

もう一方のアース部端子です。

こちらで見て欲しいのは、実は一度締め付けた部分です。(=下方の穴の周りです。)
アースをきちんと取り直すと言う事は、この穴の周りのフランジ付きボルトの締め付けた痕を見れば解ります。
均一に接触している事が解ります。
※“接触不良を完璧に無くす!”とは、このように均一な面を出す事です。小さな埃や錆の存在があるとこの面は、深い傷が出来ます。傷があると言う事はつまり接触が完璧になっていない→不均一な接触をしている事になります。

アース端子を磨き上げた物です。

磨き方にも注意が必要です。あまり硬い素材のブラシなどで磨くと表面が凸凹になってしまい、接触表面積を逆に下げてしまう事になります。
均一な光り方で判断します。

ボルト側の処理も必要です。

ねじ山の部分に錆や埃が入っているとそこでも接触不良を起こします。ねじ山の特に谷部分とフランジ面は丁寧にゴミを取り除きます。
もちろん、新品のボルトでも同じです。

ボディ側のねじも切り直します。

もちろん、ボルトのねじ山が接触するボディ側のねじも新たに切り直します。
※ボルト側もボディ側も最後に丁寧にエアで細かいゴミを取り除きます。
また、現時点でまだ完璧なテストが終わっていないので、製品名は公表出来ませんが、磨きを掛けた後に電気接点用の錆び止め剤を塗布してあります。

 今回、この修理を行なったクルマは、今まで冷却水も電気系統もほぼ完璧に修理している筈でした。しかし、どうしても何か変な部分が残っている感覚を受けます。しかし、その症状は僅かな落ちを感じる程度であり、場所も100%の特定が出来ていた訳ではありませんでした。
 しかし、完璧な修理を進めていく内に、『
これ程、悪影響が大きく出てきてしまう箇所は他には考えられない!』通常メンテナンス作業時に『もう、間に合わないかも?』と言う位、急激にひどくなってしまった事から、すぐに作業を行なう事になりました。
※急激な落ちは、加速度的な悪化を意味します。その場合、一番考えやすいのは錆の影響です。錆び付いて初期段階では殆ど浮いて来る事はありませんが、ある段階を越えると一気に錆が接触不良を広げていき、接触面を引き離すように働き、その隙間を更に錆が埋めていく・・・を繰り返していきます。ここまで来ると、フロントハーネスでは、全ての配線が駄目になり始めて結局新品交換になる事が出てきます。
 その作業が終わってから、一ヶ月単位でほんお少しの落ちを感じていたのが、全くと言って良い程変化がなくなりました。約3ヶ月後でもそれは変化がないと報告を受けています。

 その報告を聞くまでは結構心配でした。『もしかしたら、処置が遅すぎてフロントハーネス新品交換しか救える処置が無かったのかもしれない?』と悪い予想もあったからです。
 その心配も無くなり、後残された性能にあまり関係のない部分の修理を施すのみになってきました。
 予想通りの結果が生まれて本当に良かったと思っています。

 このように、完璧と思う作業でもどこかに問題が残っている事も多くあります。しかし、一つ一つを完璧にこなして行く事で答えは必ず出てきます。しかしながら、作業を行なう方も作業を依頼する側もかなりの忍耐力が要求されます。元々私には忍耐力が足りないと自覚していますが、こと完璧な修理に関しては仕方がありません。出来る限り耐えなくてはいけません。そうすれば、必ず答えが出てきます。もし、その時点ではどうしても答えが出なくても、そのまま記憶しておけば、いつか必ず答えが出てくる物です。(肺結核や白血病に突然特効薬が出来たかのように?、ある日全く他の作業を行なっていて答えが出てくる事もあります。
 機械とはそう言う物です。・・・“
いつか必ず理解出来る事がある!”“いつか必ず答えが出る!