エンジンオイル交換の待ち時間の意味?

 エンジンオイル交換の項目で、何故オイル温度が下がるのを待つ必要があるのか?の意味がよく解らない人達が居ます。
 それはある意味当たり前と言えば当たり前の事です。そこまで。詳しく話していないし、話す必要もないだろうと考えていたからです。
しかし、ある程度の経験が出来たオーナーには是非知っておいて欲しい事になりつつあります。

 通常、液体の“粘度”は主に温度に従って大きく変動します。例えば、蜂蜜は夏はさらさら、冬はどろどろとなっている事は誰でも経験するところでしょう。

 しかし、何故温度条件(=粘度)一定にする必要があるのでしょうか?
 実は、エンジンを止めた直後はオイルエレメントの中にオイルが留まってしまっているのですが、“正常な場合”エレメント内のオイルはどんなに遅くても5分以内で空になります。しかし、“
何らかの異常”が発生していると、3時間以上経ってもオイルが落ちて行かない事もあります。

 理由としては、
1.オイルの中に金属粉などが混入して、粘度が大幅に上昇している場合。
→大体の液体では、異物が混入すると粘度は上昇する傾向にあります。(もちろん、逆になる物質の液体も存在します。)
2.オイルを構成している成分が破壊されて、極端に性能が落ちていて油膜を保持出来なくなっている場合には、金属同士が直接接触して、大きめの金属粉や金属片までも混在して来る事もあります。
→レーシングアートで金属片と呼ぶ場合、主に肉眼で確認出来る大きさの金属を指します。
それらが大量に含まれると、エレメント下のオイル戻り通路を塞ぐようになります。それはあたかも、もし水が入っていれば即座に落ちてしまうと考えられる砂時計が一定の時間を掛けてさらさらと落ちていくイメージでしょうか?

オイルエレメントを取り外した画です。

手前方向にオイルが戻る穴が開いています。

オイル戻り穴の拡大です。

この穴を見ると大抵の人は「こんなに大きな穴が開いているのですか?」と驚きの声を上げます。
この径は約6mmです。この径にオイルが詰まると考えられます。

6mmはあまり正確な数字ではありませんし、その奥の通路は狭くなっている部分もあります。しかし、オーダーとしてはどちらにしても数ミリ単位です。
どれだけの金属片が混在しているのか?!」と驚いてしまうには充分な径です。

 オイルの劣化を知るために、
正常範囲の異常なのか?
或いは、
性急な対応が必要な異常なのか?

 レーシングアートではメンテナンス作業だからこそ、簡単に判断出来るデータを取る事が必要だと考えています。

メンテナンス作業で得られるデータは非常に僅かな物です。そのため、その僅かなデータから、なるべく多くのトラブルを先に発見(=予知?)する事が重要になります。
より多くの経験とデータを駆使して、“
トラブルの早期発見”の為には必ず必要な事と考えられます。なお、まともなメカニックであれば、当然、毎回毎のオイル交換で必ず確認している筈だし、多くのデータを持っているのは、当たり前の事です。