ウォーターポンプ裏側

 ウォーターポンプが駄目になっている理由としてあげられる主な物は、
1.ウォーターポンプを何らかの理由で交換或いは脱着した作業がいい加減であったため。
2.異常な高温が長い間持続した事でエンジンフロントハウジングとウォーターポンプ裏側の面で歪みが生じて漏れ始めたため。
3.ウォーターポンプから出ている下側のパイプに微少なスが入っていたためにそこから腐食が広がって漏れ始めたため。
です。

 これまで、一番多い原因は1.でした。
 しかし、40万台後半のFD3Sになると、3.もちらほら出始めてきました。サーモカバーの部分に新しい生産品でスが入って来ていると記載しましたが、同様の理由でウォーターポンプのアルミ鋳造部分にスが入っていてその部分から漏れる事があります。

エンジン・フロントハウジング〜ウォーターポンプの接合部です。

白い点々がクーラントの漏れた痕です。手前に引っ張っている黒い2本のチューブはメタリングオイルポンプに繋がっているチューブです。皆さんが上から覗こうとするとこのチューブが邪魔で正しく確認出来ないので気を付けてください。
この例ではかなりひどい状態なのでチューブ手前にも飛んでいますが、通常はチューブに隠れた部分に証拠がある事が一般的です。

全ての接合部から激しく漏れています。

あちこちから漏れています。白い点々は広範囲に渡っています。

その中で、見落としがちな部分です。

矢印は各センサーですが、この接合部も激しく漏れています。画の上方のセンサーはプラスチック部分がボロボロになっていて少し力を加えると粉々に崩れます。
もちろん、センサー本体、センサーガスケットを新品にします。
ただ、、ここまでひどい状態では、エンジンハーネスも殆ど
アウト!です。必ず、同時交換が基本です。
※エンジンハーネスの良否は、簡易判断方法としてエアポンプの配線のカバーを指でつまんで見る事で判断が出来ます。この部分は上にカバーも無いので比較的冷えやすい部位なのに、ボロボロだと・・エンジンのすぐ上の部分ではどうしようもない状態になっていると考えられるからです。
1.つまんで充分な弾力があれば、正常です。
2.つまんで硬くなっていると、冷却水漏れの修理をすぐに実行する必要があります。また冷却水漏れが完全に止まったら近い将来エンジンハーネス交換を考えておく必要があります。
3.触る前からボロボロで、センサー根元では塩化ビニールの皮膜が一部破損し、銅線が見えている。→即、エンジンハーネス交換です。もちろん、必ず、同時にそうなった原因のオーバーヒートを完璧に修理します。

漏れた冷却水がダラダラと流れていった痕です。

ここまでひどい状態はあまりありません。通常、漏れていてもにじむ程度や周りに白い点々が見え始める程度で納まります。
矢印部分に流れていっています。
この状態では、いつエンジンを破損してもおかしくありません。

ウォーターポンプを外した画

ここまでひどい状態になってしまった原因は、左側矢印のガスケットの“割れ”です。もちろん、このガスケットが勝手に割れる事は殆どありません。
どこかのいい加減なショップでウォーターポンプを交換したのが原因でしょう。=信じられない事にガスケットを再使用するショップは結構あります。それは、完全に外すと面倒な面研作業などの手間を省くためだと思われます。
面研をしない事が重要な問題なのですが・・削れればそれだけで嬉しいのでしょうか??
因みに右側の矢印は白い点々が流されています。一度付いてしまった白い点々は、そう簡単に撮れないのですが、高温の冷却水が勢いよく流れていたために取れたのだと推測され、それを見ただけで恐ろしい気分になります。『よくぞ、ここまで・・・!』

ガスケットの状態

通常、ガスケットが割れる事は殆どありませんが、極希に割れる事もあります。しかし、その場合でも1カ所です。
この画の場合では最低3カ所が割れていて、このパターンではまず間違いなくいい加減な交換作業を行なった結果と思われます。
ひどい場合では、作業者がガスケットが割れた事を確認していて、そこに液状ガスケットを塗りたくっている事もあります。その後に修理する事は考えていないようです。
また、そう言った作業をしている場合、更に面倒な追加作業を生じます。更に、修復不可能=エンジンオーバーホールにまでなる事もあります。
とにかく、いい加減な修理をさせない事です。

センサー根元からの漏れ

この年式ではセンサーが2個ありますが、根元が変色しているのも解ります。
通常、センサー部のコアの部分で、100度が限界です。クルマに使用されるプラスチック類の耐熱温度は、105度くらいが限界です。
この画の変色は、少なくとも150度付近の高温を長い期間与えていたと思われます。場合によってはプラスチックが溶けているクルマもありますが、その場合は、エンジン本体に既に歪みを生じている事も考えておかないといけません。
※場合によっては、新品のウォーターポンプのセンサー接合面を面研す必要も出てきます。特に、Oリングの接合面はバリを丁寧に取っていきます。この場合も余計な部分を削ると反って冷却水を漏らす事になってしまいます。
因みに、センサー根元からの冷却水漏れは一般のショップで発見するのは困難です。確認もやりにくいし、独特の症状が出て、冷却水漏れと言う結論にはなかなかたどり着けません。

ガスケットを綺麗に除去します。

一見、綺麗な状態に見えます。

面研作業に入ります。

初期段階で、当たる部分が真ん中のしきり部分だと解ります。
大体、この部分がせり上がっている事が殆どです。斜めにならないように、慎重に面研を進めます。
※面研作業は非常に神経を使います。まず、真っ平らなヤスリが必要になります。次に平面感覚を持ち合わせた作業者が必要です。
しかし、どちらも簡単に手に入りませんから・・まして初めて面研を行なうのは、自殺行為に近いと考えてください。
※因みに、このHPを見ている人で「自分で面研を行ないました!」と嬉しそうに?報告してくれますが、こちらとしては、『ああ・・この人のクルマの作業は出来ればやりたくないな〜!』です。それ程、悪い状態にしてしまっている事が多いのです。
いい加減な作業は、絶対に施さないでください。後でもっと大変な事になってしまいますから・・・

全体に、均一な面研を施した場合です。

歪んで突起した部分のみを削り落とし、全体に平行に面研していった結果です。
コツは、相手に逆わらず時間を掛けて面研する事です。どこかに力が入るとそこの部分だけが削れてしまいます。一度斜めになった面は元に戻すには反対側を限界より多く削らないといけなくなってしまいます。
面が出たら、仕上げはピカピカになるまで表面を磨きます。この場合も平行に一番神経を使います。

 冷却水漏れの修理で一番大事な事は、接合面を完璧に止める事です。
口で言うのは簡単ですが、完璧に止めるための作業はかなりのコツと集中力が必要です。また、それまで経験していない漏れ方に出くわす事もしょっちゅうです。充分な観察力も必要です。

 また、それらを持ち合わせていないメカニックが更にいい加減な作業を施した場合、最悪、エンジンオーバーホールになります。
 言っている意味が解らないかも知れませんが・・・ウォーターポンプの接合部はエンジン・フロントハウジングです。この部分の面研を失敗すると言う事は、フロントハウジングを新品交換するしか方法がないと言うことになります。つまり・・・エンジンを作り替えると言う事です。

 このホームページで、何度も“充分な注意が必要です!”と出ている事は殆どの場合、出来ればやらないで欲しい作業を示唆しています。
しかし、作業をやって見るかどうかは、本人の勝手です。それを止める事は出来ないし、止めるつもりもありません。ただし、そのいい加減な作業によって重大な不具合が発生し、それをレーシングアートで修理するために、特に時間的な負担が増大する場合、作業をお断りする場合もあり得ます。(=現状で長期預かり車両が溢れかえっています。また、新たに預かりが増える事で通常作業に支障をきたす場合は残念ながらお断りする事も考えられます。)
 いい加減に修理するのも勝手だし、技術力のないお店で解っていながらいい加減な作業を依頼するのも勝手です。しかし、レーシングアートでその尻ぬぐいをするのはうんざりです。あくまでもあなた自身の責任で判断してください。