まず、バッテリー端子
電気系統の魔法の第一歩はまずバッテリー端子の接触面です。
レーシングアートで、殆どの新規会員が驚いてしまう、その結果の大部分はこの接触面の見直しに掛かっています。
すでに新車でもこの部分の接触不良が発生しています。接触不良を直すだけでも驚く結果が得られています。
また、最近の端子の形状を見ると、メーカーが一般メカニックを信用していない事もはっきりします。
数年前まで、接触面をなるべく多く取るような形状だった物が、現在殆どのメーカーで上下の端子間に隙間を開けて、装着がし易い形状に変化してしまい、接触面は半分程度にまで減少しています。
逆に言うと、この端子を完全密着させるには相当のコツが必要だと言えます。レーシングアートでは、コツは必要でも完璧な装着をすれば、接触面を多く取れる端子に交換する事もあります。(=もちろん、この端子は一般には販売されていませんし、猿真似をしても、逆に悪い結果を生むので決して真似る時は完璧に!)
※簡単に100%の接触面を達成すると言っても、殆どのメカニックが失敗しています。だからこそレーシングアートの魔法が生きるのですが・・
接触不良を無くすのは、特にバッテリー端子では難しい作業になります。バッテリー本体の端子は特殊なテーパーになっています。この形状をイメージ出来なければまず無理です。また、端子が非常に柔らかいのもやり難い理由です。過剰な力で締め付けると変形してしまい、バッテリーを新品に交換する必要すら生まれます。
一般のオーナーに対するコツは、
1.ナットを充分すぎる程緩める。
2.端子を丁寧に押し下げて、底面まで下げる。→この時力を入れすぎると変形します。
3.押し下げながら、ナットを締め付ける。→この時、トルクを掛けすぎない。(=最大トルクでも1.2kgm)
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ノーマル端子: 上下二本に分かれている形状をしています。この形状の利点は、本来テーパーになっているバッテリー側の端子の形状に締め付けるだけである程度合わせる事が出来る事です。 |
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スペーサーに注意! 端子の隙間に樹脂製のスペーサーがあります。この部分は、元々締め付け過ぎを防ぐための物と考えられます。と言うのも、締め付け過ぎるとバッテリ−側の端子に歪みを生じさせ、バッテリー自体を終わらせる事にも成りかねません。 |
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更に無惨な状態の端子: プラスチック樹脂が変性しています。ここまで腐食が進むとバッテリー下側にあるエアコンコンデンサー、ラジエター本体、オイルクーラーのオイルライン・・・周りのパーツに腐食が広がっている可能性が高くなります。 |
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ギリギリ許せる状態? レーシングアートでは交換や修理を薦める状態ですが・・この程度であれば修正も可能です。 |
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完璧な作業が前提の理想的端子: レーシングアートで他の電気系統の修理がある程度進んでいて、ノーマル端子に問題が発生していて、更に上のグレードにクルマを上げたいと望むオーナーにこの作業を行ないます。 |
最後に、何故このような腐食が発生するのか?ですが・・
まず、既に端子部分に微少な隙間(=接触不良)が生じているために、オルタネーター側は充分な電流を流せないのでオーバーロード状態(=過充電)にあります。バッテリー内ではバッテリー液が大量の泡で表液面から吹き上がってしまいます。その吹き上がってきたバッテリー液が隙間から漏れ出て、端子に掛かります。
御存知のようにバッテリー液は希硫酸です。希硫酸は腐食性が非常に強く、更に蒸発することはなく反って濃縮されていきます。放ったらかしにすれば、より強烈に腐食を高めます。
また、濃縮された希硫酸は、白く半透明の粉になります。この粉を取り除くには大量の水で流すしか方法がありません。決して、エアで吹き飛ばさないでください。腐食をエンジンルーム全体に広げる事になりますから・・・
※因みに、このような状況になるのは、バッテリーが上質であればある程、発生しやすくなります。元々駄目なバッテリーではここまで綺麗な悪影響は出ません。(=ただし、この現象とは異なる別の症状が発生しますが・・・)逆に言えば、上質なパーツを付ける場合には絶対にいい加減な作業をしてはいけない。最悪、その作業が命取り?になる場合すらあり得ます。
※どこかのHPでこの話題が出ていて、誰も応えを出せない状況を見た事があります。まともなメカニックであれば、理論がどうのと言う事を知らなくてもエアで吹き飛ばす危険性を知らない筈がありません。その状況を見て、ここまで一般メカニックの腕?が落ちている事を痛感させられました。
ある意味、「勘でも良いから知っていてね!」って事柄ですよね。