エアコン外気導入口からの雨漏れ
新車であれば、雨がブロアモーターまで入って来る事はあまりないと思われますが、クルマが古くなっていたり、硬過ぎる足廻りを入れていたりすることで簡単にシールが破れる事で雨水が入ってきます。
それは、純正の水へのシール性の対応が甘いせいだと考えられます。シールの構造を見れば、簡単に理解出来ると思います。
ブロアモーターの位置関係:
エアコンやヒーターのスイッチをオンにした時に回るのがブロアモーターです。FD3SやFC3Sでは助手席の左膝の上部にあります。
外気導入モードにするとフィンのすぐ上にあるフラップが開いて外気に直接触れるようになりますが、その前の流路には雨水が直接入って来ないように仕切があります。
※通常の外気流入で雨水が入る事は、よっぽどの豪雨の中で高速走行をしない限りまずありません。
エンジンルームから見たブロアモーターの位置関係: 矢印で示した位置の下側にあります。 |
|
ブロアモーターセットを外した画: フィンが上を向いていて、モーター本体はフィン下側にあります。 |
|
ブロアモーター本体: 更に分解していくとモーター本体が見えてきます。 因みに、古いFD3Sで助手席足下に雨が入ってきてフロアマットが湿り気味で、助手席の人が「あっ!足に上の方から雨が落ちてきたよ!」なんて事になればかなり重症でブロアモーターは錆だらけって事になります。 |
シールの構造:
本来なら、上記の流れで外気が入るので特に問題はないはずです。
しかし、グリルカウルを取付けるビスの受け手(=グロメット)が問題なのです。
一番外側にあるグロメット: グロメットは、長方形が5個、センターに1個、外側に2個及び、フロントガラスの位置決めをしているウインドスペーサー2個があります。 |
|
古いグロメット: 3種類を撮って見ましたが、よく解り難いかもしれませんね。 |
|
グロメットのシール: 一番外側のグロメットの新品です。 |
|
ブロアモーター側から外を見た画: 長方形のグロメットの取付穴がぽっかり開いているのが見えます。 |
|
ブロアモーター側から外を見た画: 同様に外側のグロメットの穴もはっきり見えます。 |
|
実際にシールを行なうグロメット: 特に重要な位置にあるのが、助手席側の外側から2個です。その内側に仕切板があるので、その内側は通常では入ってこないと考えられます。 |
水漏れが“激しく”発生した後のブロアモーターの実例:
ブロアモーター底部のカバー部分: 見ての通り、かなり激しく錆び付いています。 |
|
ブロアモーターのカバー: ここにも錆が残っていますが、丁度雨水が溜まった形がはっきりと残っています。 |
※雨漏れは、上記のような状態は非常にまずい物で、ここまできていると多分エンジンは何度か終わった事があるはずです。
実際にコンプレッションを落とす悪影響を産み始める雨漏れによる錆は、ピカピカに仕上げたブロアモーターのコミュテータ表面が曇ってしまう位で、悪影響が出始めます。
つるつるの表面が、錆が発生する事で、少しでもザラザラになるとどんどんコミュテータとブラシに傷を付けていきます。一度傷が付き始めると加速度的に進みます。
10万台のFD3Sのブロアモーターの実例:
ブロアモーターを外して: まず、確認するのがフィンの汚損状態です。カバー底部に黒い埃が多く見かけられたら、カーボン製ブラシが削り取られた破片の粉と考えた方が無難です。 |
|
モーター部芯の先端部: 通常の外気に曝されていても少しだけ錆びる部分ですが、正常範囲は先端の1mm以内です。この画のように全範囲に分厚い錆が発生している場合は、修正は効きません。新品を取ってから、加工が必要になります。 |
|
ギリギリ再使用が可能な状態: これもかなりひどくなっていました。 |
|
モーター内部: 主に、ローター(電機子)の間にカーボンの粉がびっちり付着した綿埃が多く入り込んでいます。 因みに、80%の割合でこの部分に虫の死骸が入り込んでいる事があります。 |
|
コミュテータ部: ブラシが接触した部分は、かなり深くえぐれてしまっています。 |
|
ブラシ部: コミュテータの接触面より、ブラシ面の方が解り易いでしょうか? |
シール方法:
重要なのは、完全なシールを作る事と耐久性を充分取る事です。
その2つを満足するにはシール剤の吟味が重要です。試行錯誤と厳しいテストで現在のシール剤を選択しましたが、今後場合によっては全く異なるシール剤になる可能性もあります。
グレーのスポンジを外して、全ての面をシール剤でコーティングします。
|
|
対策するグロメットを全て取り外します。 取り外した穴の周りは特に念入りに掃除します。埃を取るのはもちろんのこと、脱脂も忘れずに行ないます。 |
|
各グロメットを装着した状態: シールは、気温によって硬化時間が異なります。グリルカウルを装着するタイミングは、残ったシールを指先で確認しながら決定します。 |
作業後に、コイン洗車場などで高圧の水を吹き掛け、ブロア内部に水が侵入しない事を確認して、グリルカウルの対策は終了です。
※この作業は、完璧に行なう必要があります。もし、少しでも自信がなければ、絶対にやらないでください。
一度、駄目なシール方法を取ると余計ひどい雨漏りを起こします。そして、その後再作業を行なう時には、ここでは書き現せない程の苦労を強いられます。
くれぐれも軽い気持ちでは作業しないでくださいね!要点を完全に理解できていなければ、必ず痛い目に遭います!
※基本的に他の他メーカーを含めた他車両でも、ブロアモーター自体は同様の位置に納まっていて、同様に雨水の影響を受ける筈です。その場合の対策方法はそのクルマに最適の方法を取る必要があります。
★★★既にブロア対策のみを行なった正規会員の方へ★★★
走行距離が少ないクルマでも、60万台で4,000番台以降では、雨漏れが発生する危険性が高い事が解りました。至急グリル対策を行ないます。しかし、すぐに作業予定が入れられません。とりあえず、ご連絡ください。作業予定を調整してご連絡します。
作業が完了するまでは出来るだけ走行を控えてください。宜しくお願いします。