慣らしの悪いエンジンの内部では・・

 慣しの悪いエンジン内部では、一体何が起きているのでしょうか?

 ロータリーエンジンの命は、何と言っても、シール性です。

 『慣し』は、各シールを理想的な形に当たりを付けるのが目的です。

 例えば、ローター頂点に位置するアペックスシールは、ローターハウジングの各位置で、当たる位置が異なります。(下の図の様に、てっぺんが当たる所、斜め側面が当たる所、逆側の斜め側面が当たる所があります。)

ローターハウジングの右側

ローターハウジングの下側

ローターハウジングの左側

理想的な慣しが、終了すると、アペックスシールの断面は綺麗な曲線を描きます。(理想的なアペックスシールの断面:左図)

 慣しを失敗すると・・下のテーブル左の断面図のように、理想的な曲線を描かずに、ひどい時には、一部直線が混じってきます。

 その時の、アペックスシールの全体像は、下のテーブルの右図のように、斜め側面に一部直線的に削れた部分が発生しています。この部分がローターハウジングに当たる位置では、圧縮が漏れて、結果的に、この形になってしまった燃焼室のコンプレッションが下がります

 これが、慣しを失敗した時の、アペックスシールの実体です。少しだけイメージできるようになりましたか?(大体の人は、こうなってしまっていると考えられます。)

 もちろん、各シールは、走行距離に応じて、少しずつ削れながら、シール性を保っていますから、慣らしが終わったとしても、変な使用方法でまた、ダメになることもあるし、

逆に、左の図のように、
一度慣らしを失敗していても、もう一度、心を入れ替えて(?)、初めから慣らしをやり直せば、もしかしたら、理想的な曲線に戻すことも可能です。確率はかなり低いので、新車時に、気合いを入れて慣らしを行なうのが、もちろん原則です。)